同じ理由

 淫らなものばかり考えていると時間が経つのが遅いのとたぶん同じ理由で、優しさの中にいると時間の経つのが早い。優しさという感情を、今まで濃厚で金色に光るハチミツみたいに考えていたけれど、そればかりでは得られない代物が沢山あるということを知る。つまるところ、僕が優しさをつかって半ば強引にやりきってきた数々のことは、どうやら、その他のものですんなりと行けたということらしい。

 人は変わらないというけれど、変わってないね、なんて言ってくれる人が必ずどこかにいるという理由で、人はどこまでも変わっていける。遅いなんてことはなくて、あの偉そうに自分が絶対だと主張する「老い」に負けた人類にならないためには、その信頼と絶え間ない変化の時間が必要なのだろう。これからもずっと、身をたゆたいに任せる必要が。

  僕の頭の中にいる小動物や、女の子や、正体不明のカケラたちは、結局のところ、だれかからの借り物なのだと思う。自分だけのものなんてないんだな。何かしらの物語が姿形を変えて、僕の元に来て、僕はそれを借り物として、何かしらの信じる確かさを含ませていく。

 だから本を読むのが面白いのとたぶん同じ理由で、人は本当に孤独でいい。