フクラム国

タルイのブログです

白い背表紙の詩集の中から

それは湖だった。 

隠れ家の前に広がっていたもの。

君と隠れ家で出会ってから、僕はそこを留守にすることが多くなって、湖のホンカクテキな探検をはじめた。

君はその間家でどんな風に退屈を過ごしていたんだろうか。ソファーに寝転んで好きな詩を読んだり、鉛筆を唇と鼻の間に挟みながら空想の続きを考えたり、僕のダメになった原稿を紙飛行機にして飛ばしたり?

 

僕が湖の隅で見つけたのは人一人が通れるくらいの大きな穴で、どうやらそこからしょっぱい水が流れ込んで来ているらしかった。傷口に擦り込まれるような、冷たくて強くて、荒々しい液体が。

僕が隠れ家に帰る頃はちょうど夕暮れ時で、幸福は、月みたいにいつだってそこにあって、隠れているか出ているかだけなんだ、なんて、少しだけ悲しいことを考えたりする。

 

ねえ、僕たちが大切に「ここだけは大丈夫」と思ってきたこの場所も、実は海に続いているらしいよ。優しい人も怖い人もいる、好きな人も嫌いな人もいるあの場所に、繋がっているらしいよ。

僕たちが絶対に純粋だと思ってたあの湖にも、実は海水が混ざっているなんて、君は怒るかな、多分怒らないだろうな。実は今日おんなじことを考えてた、っていうかもしれないし、枕元に積まれている白い背表紙の詩集の中から遠くの国の人の詩を僕に紹介してくれるかもしれない。

 

隠れ家が、外の世界と繋がっているってこと、今なら不思議と、苦しいことじゃないような気がする。僕たちはここから、湖の穴から、あの海全体を好きになることが、もしかしたら、できるかもしれない。そんな風に思えたのは、たまたま夕暮れ時の風が肌に心地よかったからかもしれないけれど。

 

誰でも持っている感情に気がつかない人がいるように、誰にでも気がつかないだけで何か大切なものがあって、それが触れ合って傷ついたり、努力をして磨かれたりするのなら、誰の心だってきっと、大海原に流される孤島のような物語を密やかに持っているんだ。

そして僕らの隠れ家もまた、大海原に流されながら孤島のように存在しているとしたら、いよいよ夢みたいに語り合っていた未来の話も、ゲンジツテキになるのかもしれないね。

 

少しの間だけ感じたのは、昼間の月のような幸福。