フクラム国

タルイのブログです

カンフーボーイ/Kung Fu Boy

 力が欲しいと思ったのは当然の帰結だったように思う。正しさをすり減らすような毎日に嫌気がさして、組織から遠ざかろうとしたけれど、そう簡単に許されるはずもなかったから、誰にも言わずに地下街でカンフー師匠のもとについた。
 「力は流動している。逆らってはいけない」いつもカンフー師匠はテツガクテキな事を言う。オレに詳しい事はわからないけれど、不思議と正しさをすり減らしている気はしなかった。
 マッチョに筋肉をつければつけるほど、師匠は無口になっていった。今から思えばその無言は他ならぬ非難と、オレに大切なことを気づいてほしいという、ひどく純粋な祈りだったのだろう。それでも地上街では最強と言われ、見切れない技はないというほどになった。田舎の小さな街の中では。
 半年と三日が過ぎた頃に、組織全体を相手にとって、自分の正しさのために拳を使ってみたけれど、あっという間にそれは終わってしまって、よく見ると、オレはあんなに怖がっていたボスを殺してしまっていた。路地裏は暗い闇の中で赤黒く染まって、何かが報われたと思う前に、言いようのない虚しさと、もう戻れないのだという確かな認識が胸を打つ。

 師匠に頭を下げにいったのは、更に半年が過ぎた頃である。それから先のお話は、さしたる事件なんてないのだから、時間のあるときにでも、また、いずれどこかで。