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できるだけ真っ直ぐなうそ

タルイのブログです

Nuit d'etoiles

 後から振り返れば特に思い出すこともないような、後から思えばさして重要でもないような毎日に今日もまた揺られながら、陰鬱の豊かな春を過ごしている。

 

 僕たちが今見ている星の光は実はかなり昔のもので、今現在はもしかしたら、その星は無くなっているかもしれない、なんて話は多分有名だ。いうまでもなく何か示唆的な、含蓄のある話ではあるけれど、もっと純粋な気持ちの中ではただ、その事実をどうしようもなく切ないことのように思う。

 待つことにもきっと意味がある、と、そんな言葉を誰かが言ってくれるけれど、他人の幸福が遠くにいればいるほどはっきりと見えるように、或いは、他人の不幸が近くにいるほどしっかりと感じられてしまうように、信じるという行為にも、待つという行為にも、それなりに重さのある感情をすり減らしているように思う。

 空を見れば星が輝いている。夜の中で輝くそれは、闇の中にある一筋の尊い光というより、もっと身近な、誰にだって届きそうなものである気がする。……

 

 後から振り返れば特に思い出すこともないような、後から思えばさして重要でもないような毎日に今日もまた揺られながら、陰鬱の豊かな春が過ぎていく。

 自分の中で二番目に大切な感情が、暖かい夜の海に揺られているのを感じながら、家に帰る気もなくゆっくりと、明かりの灯る方へ歩いていく。夜はすでに始まっていて、空を見上げれば星が輝いているし、イヤホンをつければ、僕らは遠い国の音楽を聴くことができる。幸福からも不幸からも無縁な場所で、ただ感覚的な海の中で、眠気が訪れるのを待つともなく待つことが出来る。美しい女性がイヤホンから、夜の星に恋を歌っている。星は身近にある幸福でありながら、遠くにある不幸でもあって、だから僕らは何の気なしに星を見てどことなく、救われたような気持ちになったりするのかもしれない。