Jimbo’s Lullaby-"children's corner"claude debussy

 まだミミが4歳だった頃、寝巻きには大きなゾウの刺繍がしてありました。ピンク色の下地に、丸くかわいげがある、しかし少しだけぶきっちょな形のゾウは、ミミのお腹にしっかりとはりついています。歯を磨いている時も、本を読んでいる時も。しかし、あかりを消してベッドの中に入りこむと、ゾウはのそのそと動き始めるのです。部屋の中を照らすのはほのかな月明かりだけで、ゾウのぶきっちょな形もよく見えないし、もしかしたら夢かもしれないな、ほっぺたをつねろうか、とミミは思うのですが、しかしはっきりとした「お腹からゾウが離れる感じ」があったので、結局やめてしまいます。たとえつねる程度でも痛いのは苦手だし、何より、夜は寒いし怖いので布団から手を出したくないのです。

 さて、掛け布団からなんとかして這い出たゾウは、次ぎに何をするかといいますと、前後にゆっくりと揺れながら、持ち前の鼻を前後左右に動かし始めます。まるで星座をなぞっているみたいに。その姿を見ていると、ミミはまるで、ゾウと一緒に外の公園まで散歩に出ているような気になります。公園ではこんな時間だというのに、幼稚園の同級生がかけっこをしていて、ミミは元気だなあ、と何の気なしに思いながら、草原の上でゾウに星のことを教えてもらうのです。ゾウは一つの星座をなぞるたびに、開いているかどうかよく分からないような、ほとんど線になってしまった目をして、「のーん」とミミを見るので、ミミは少しおかしくなりながら「わかった」と、笑って答えるのでした。…

 

 月明かりがミミを包んだ頃に、ゾウはすり抜けるように夢から戻ってきます。

「笑って寝てるよ。」月明かりが呟くと

「何がそんなに面白いのかなぁ」とゾウは優しい声でとぼけます。

「君ももうおやすみ。もう今日は、大丈夫だ」

月明かりに自分の役目が無事渡ったのを見ると

「うーん、眠いなあ」ととぼけた声で、また掛け布団の中へずりずりと、ゾウはゆっくりゆっくり戻っていくのでした。