フクラム国

タルイのブログです

The classroom leader of eyeglasses

 遠く向こうで、彼女が手を振っている。太陽で薄く白ずんだ視界の、遥か遠く向こうの方で。

 きっと、もう「さようなら」と、たったそれだけの言葉が足りないだけなのだろう。日が落ちて夜がくれば、ここが何処だかわからなくなって、きっと、君とすれ違ったあの日のことを忘れるのだろう。僕らはまた過去を忘れて、自分の線路とかいうものを無責任に歩き出すのだろう。

 けれど彼女は走り抜けていった。髪の毛を乱しながら、迷いなく、全速力で。しょうもない笑い話の途中で、口元いっぱいに笑みを浮かべながら。僕のオチを楽しみにするかのように。明日を楽しみにするように。この街に生まれてきて、幸せだったとでもいうかのように。

「また、学校で会おう」大声で彼女は手を振った。

「また、学校で会おう」口から零れ落ちた、そんな虚構に世界が色付いた。稲穂を靡かせる透明な風と、極彩色の夕暮れと。

 笑えるくらい天気の良い1日が終わる。目を閉じてゆっくりと陽だまりに浸る。久しぶりにこんな清々しい気分で、大切なものを忘れたままで。