顔を上げれば空が微笑みかけている

正しさや、強さや、大切さを定めることもせずにただ空は、5年前と背丈の変わらない僕を写している

この体で短い命を生きること、束の間の一生を借りること、全てを知って見守るように、空はそこに佇んでいる

今まで出会って来た人々の中で、もう会わなくても良いと身勝手に定めた人々の中で、ほんの一握りかもしれないけれど、誰かの中で、今日も僕が生きている

許して欲しいと思うような事もたくさんあるし、もう振り返りたくない過去も沢山あるけれど、僕の中に沢山の生きていて欲しい人がいるように、もしかしたら僕も、誰かの生きていて欲しい人として、生きているのかもしれない。

顔を上げれば空はかつてあった破廉恥な姿から、今の偏狭な姿までを、否定もせず、評価もせず、ただ「それが君なんだよ」とでも言うかのように、無言で微笑んでいる。

この体はただ何処かから借りた一つの物でしかなくて、大切なことは…

大切なことは、と考える。楽しく生きれればそれで良いと思う。ただ自分が面白いと思うことに、没頭出来ればそれで良いと

けれどそれより大切な事があるのかもしれない。誰かを想うこと。存在していて欲しいと想うこと。君がいてくれて良かったと伝えること。その相互作用の中に、芸術があり、愛があり、多分、人間という存在を肯定視できる、生きていても良いのかもしれないと思える、唯一の価値がある。

空の下にいるこの、酷く矮小で、不器用で、弱く逃げ腰なこの僕を誰かに伝えること。これが僕だと伝えること。誰かがそんな僕にもしかしたら、想いを持ってくれるかもしれないと願うこと。

自分の内側の世界を幾ら探しても、産まれてきてきた意味なんてないのかもしれないね。自分以外の誰かがまるで奇跡のように、僕を許して、認めてくれるものでしかないのかもしれない。

 

顔を上げれば空が微笑みかけている。

外側が何処へだって続いていること、内側の世界が死に向かって行く中で「それでもせめて」と誰かを想うこと。

夢に見た知らない街にでもなく、本当の故郷でもなく、他ならぬ、君の街へ行きたいと思えること。