10月の風景

 秋を多分に含んだ風は、遠のいていく電車から逃げるように、私の頰へと届く。

 2番線ホームにはまばらな人影。特有の透明さをもった声は、おそらくじゃれあう高校生たちのもので、それはまるでわずかに残った夏の手持ち花火みたいに、この味気のない空間にカラカラと響いていた。

 黄色の電車を何本見送ったのだろう。夕日はその間にだんだんと、私に気づかれないように姿勢を低めていた。

 空には白色の月が見える。私は何の気なしにスカートの端をほんの少し持ち上げる。

 出来上がった僅かな隙間に入り込む風はそれなりにこそばゆくて、言い知れぬ心地よさを感じながら、ああ、なんて大胆なんだろうと、そんな風に自分を笑う。

 ホームの一番端の、最も人気のない、最も隣に近い場所で。

 髪がなびくと同時に、ホームには侘しげなアナウンスが通る。

 その声はなんだか果てしなく遠くから聞こえているようで、知らない世界にいるもう一人の私が耳にした音が、なんらかの作用によって私に届いたかのようだった。

 はあ。

 この街に、私は全く不釣り合いさ。

 沈むように橙色が、所狭しと並ぶ街灯に膜をおろしていく。

 あの高校生たちは電車に乗り込んだ。青春の残滓が残らず隣駅へと向かう。

 もう一駅待とう。

 もう一度、あと一度だけ、スカートの端を摘んでみた。

 少し濁った、性の香りがした。