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タルイのはてなブログ

タルイのブログです

Portal 7-2 スワン

変な熱気に目覚めると、一瞬この場所がどこだかわからなくなって、ああ。スワンボートの中だった、なんて気付いた次の瞬間には、ごうごうとした音が否応なしに耳に襲いかかり、本能的に、世界が終わりかけてることに気がついた。

空が秩序を失って混乱している。パリンと甲高い音が次々に響いている。星が衝突しているのかな。

どうなってるの、これは。

思いついたデタラメな歌をとりあえず歌ってみる。それも出来る限り大声で。喉には無理をした分の痛みがかかって、あれ、ここは夢じゃないらしいと、笑えてくるような結論に至った。

湖を炎が囲って、森を作っている。本当に綺麗な、世界を浄化するような火柱。

私、どこから上がればいいのかな。

湖から上がれないじゃん。

ありゃ、困ったな。

湖全体を囲って、真っ赤な熱は祭りのように蠢いている。

困ったな。

「くうちゃん」は持ち前の切なそうな顔にメラメラと橙を映していて、まるで命を注ぎ込まれたかのようだ。

なにこれ。

この感情は知らない。多分、これは寂しいとも、苦しいとも違う。

多分だけれどこれは、楽しいって気持ちなんじゃないか。

だって今、どうしようもなく、冴え渡っている。

こんな世界の変化を、ずっと求めていた。全てが燃え、後には何も残らないであろう世界的な一瞬間の美を、ずっと求めていた。

イワンは何をしているだろう。彼も多分、この光景に、気持ち良くなっているはずなんだけれど。

理屈もなにもわからないけれど、終わりはすぐそこにあって、それもこんなに綺麗な世界の中にあって、多分、その一部となって遠からず私も消えていくのだ。

 

「リリー」彼の声が聞こえた気がした。振り返ると水しぶきが上がって、泳いでくる彼が見えた。

死が辺りでメラメラと燃えている。現実から私が遠ざかっていく。彼だけが近付いてくる。

 

私は多分、この日のために生きてきたのだ。

世界が終わるのに合わせて、私の炎をも燃やすために生きてきたのだ。

生きていて良かった。何よりも美しい終わりに、起きていて良かった。