Portal 8-2 星を落とす

「ねえ、イワン」

そうか。

「僕らはどこから来たのだっけ」

僕はいつも布団に潜って

「僕らは本当に神様から生まれたのかな」

考えていた。

「僕らはどうやって生まれてきたんだろう」

星の降る街のことを。

黄金のひまわりのことを

夢見ていた。

 

「もしかしたら僕もまた、この街の外に、「ただいま」と告げるべきどこかに、帰らなくてはいけないかもしれない」

 

ここは僕の夢のなかだ。

 

イワンはただゆっくりと笑った。次々に落ちる星々が生み出す轟音のなかで、それはぽっかりと浮かんで見えた。風は強く吹いて、街に広がる美しい炎の大河を、大きくうねらせていた。

 

「みんないなくなるんだな。この場所から。そんな風にして」イワンは決まり悪そうに言う。普段から隠すともなく表情に現れる諦観が、この時ばかりははっきりとした彩りを見せていて。

「きっともうすぐ電車が来るよ。お前が外に出るというのなら」

 

「イワンは、僕の夢のなかの人物なの?」

「いや、そうじゃないと思う。多分僕は、殆どお前と同じだ」

「同じ?」

「多分僕もこの世界に迷い込んで、そしていつの間にか帰るべき場所のことを忘れて、代わりに人と出会って、忘れられない思い出に出会って」

空には極彩色の流星群が、空白を競うように飛び交っては甲高い音を立ててはじけている。そんな世界の崩壊にはまるで興味がないとでもいうかのように、いつものように彼は、なんでも知っているような顔をした。

「幾らか気がついてたよ。ここが現実じゃないということ。でもね、それから僕は逃げたんだ。毎日のように河川敷を歩いて、精一杯学校に通って人間とあって、まるで大人みたいに、現実を現実としか言えなくなる自分から、逃げて、逃げて、逃げて」

でも僕は、彼が思いのほか矮小なのを知っている。

「気がついたら、そんな自分はいなくなっていた。もう僕の乗る列車は、ないんだよ」

彼が人一倍純粋で、誰よりも人との別れを悲しむ、あまりにも人間的な存在であることを知っている。

「ヘンリー、お別れだね」

彼の顔にはいつも、諦観の分だけ、儚い希望が宿っているのを、僕は知っている。

「うん。そうみたいだ」

僕はしっかりと友人に、僕の生きる道を示す。それは彼が唯一望む、僕のあり方だ。

「イワンはどこに行くの?」

その時、破壊的な音が轟いた。背後に落ちた星は青く砕け散り、熱風と刃物のような砂塵を生むと、丘全体に破滅の空気をばらまいた。

 

「リリーのところに行ってくる。多分彼女も、まだここにいる」

「じゃな」

 

いつもと同じような別れを落として、彼は砂塵と炎の街へと駆けて行った。

そして後には破滅だけが残ると、わずかして、遠くに一際輝く銀色の煌めきがうっすらと見え隠れし、僕はおぼつかない足取りで、銀色の停車する駅へと、ゆっくりと向かって行った。……