フクラム国

タルイのブログです

Portal 8-1 星を落とす

 昔は大人というと、自分たちとは別の人種であるような気がしていた。草原をかけている時に、ベッドの中で物語を考えている時に、友達と二人だけの秘密を見つけた時に、友人だけで「今が一番幸せかもしれない」というような一時にたどりついた時に、自分が大人になるなんて、どうして考えられただろうか。

 今はどうだろう。毎日大人になってしまうだとか、そこから逃げる方法だとか、そんなことばかり考えている。打ち合わせをしたように解けていく僕の気の知れた仲間たちとの関係は、まるで、「これが現実だ」とでも言いたいかのように残酷で、子供として生きるために必要な活発さや、好奇心や、非日常性なんかがおざなりになってくると、影を潜めていた大人という変なレッテルが、背後から恐ろしい速度で迫ってきていた。

 

 もう戻れないのだ、そんな言葉が浮遊しては、壊れていく日々に紫色の憂鬱を突きつける。

ねえ、あの日君はなんて言ったんだっけ。

 電車に乗って消えていく君の背中は、星を眺めて泣くあの純粋さを、確かに失っているように見えた。

 

 「星が落ちてきて全部燃えてしまえばいいのに」

イワンが隣で喋っている。はるか遠くから聞こえるような気がする。

 「全部って、僕らも?」

 「うん。映画みたいに燃やして、最初から始め直すんだ」

 

 僕らのあの美しかった夜を、星の中に閉じ込めて、まるで壊れた歯車みたいに、いつまでもやり直せたらいいのに。

 

 その時だった。

空に降り注ぐ流星の群れが遠くの方で大きな水しぶきをあげた。

 

「え?」イワンが立ち上がる。

 

 空がヒュン、ヒュン、と切り裂くような音を立てている。ごうごう、と不気味な音を立てるのは地面か、あるいは空か。

 

 静寂が風に乗って空を支配するゴルゴダの丘に、街の騒ぎが聞こえた。

 聴覚には複数の混乱がぐちゃぐちゃのままで届いている。

 

「星が降ってきた」

イワンが、驚きの中に、喜びと悲嘆と諦観を混ぜて呟いた。

 

 その時だった。

 この世界は、それ自体が、僕の物語なのかもしれない。

 炎を燃やす星々が僕の頭に、一つの大きな直感をもたらした。