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タルイのはてなブログ

タルイのブログです

Portal 3-5 Freud

6.

 砂浜にある小さな駅へと向かうまで、怯えるように手を繋いだ。孤独が初めて、内側から感じられた。

 オジジの薄汚い掌は確かな暖かさを持っていた。向日葵よりも些細で、微かな温度は、しかし金色の毛布が持たない確かさを持ってもいた。

 

 砂浜に着くと、既に夜は明けかかっていて、東には活動的な白い影が潜んでいる。ヒューイは老人に背負わされていたリュックから碁盤を取り出した。

「最後の勝負だ」

最後はオジジが黒で、ヒューイは白だった。

 

タン……

「朝が来るよ」

タン…

「寂しくなる」

タン…

 

タン……

 

タン…

「悪いなオジジ、先行くぜ」

タン…

「悲しい話だ」

タン

キチガイ達が向日葵をしゃぶるのを見たくはないさ」

 

 列車は砂浜の向こうから、朝日と共に、落ち着きのある速度でこの街に向かってきていた。音もなく、冬を切り裂くように、しかし冬よりも遥かに、虚構を纏って。

 

タン…

「外の街では人を殺しちゃならない。それが秩序だからな」

タン…

「分かってる」

タン…

「二人の友人はいいのか」

タン

「いい。大した仲じゃない」

タン

「悲しむぞお?」

タン…

 

タン……

 

タン…

「自分で手一杯なんだ」

 

タン…

「ジジイ、早めにくたばれよ」

 

タン……

「はいよ」

 

タン…

 

タン…

「あちゃ」

 

タン…

 

タン…。

「ははは。ボクの勝ちだ」

 

 凍てつく朝の寒さが強い風を招いて、ヒューイの赤色のマフラーが勢いよく空に駆けた。

 

「じゃ、バイバイ」

 

 銀色の無人電車は正確にヒューイの前で止まり、ヒューイは諦めに似たような微笑みを老人に向ける。

そしてもう一度、「バイバイ」と手を振った。

 

 言いようもないほどに美しい銀色の電車を見送った後、老人は、赤いマフラーが地に落ちるのをまるで此の世の終りみたいに感じながら、しかしどうすることもできずに、ただ、ぼんやりと眺めていた。……

(終)