Portal 3-3 Freud

4.

 明くる日もまた冬で、夜は当たり前のように訪れ、相も変わらず、紫のキリンは街を淡々と襲っていた。キチガイたちは気がつかないのか、或いは興味がないのか、不気味にヘラヘラと笑っていた。彼らはおそらく、飲み物の力で記憶を無くすことによって、この街で自由と平和を保っているのである。

 向日葵畑に向かう道すがら、神秘を内包した霧が僅かにかかるゴルゴダの丘は、未だ知らぬ此の世の果てを、どこからか想起させた。空虚は草の彩を奪っていて、未だ馴染めぬ世界であった。ただ、死ばかりが蔓延する冬の夜の底を、しとしとと歩くのは孤独の極致とも取れて、心なしか肌に合った。

 

 ポケットに忍ばせたナイフは、当たり前のようにそこにあって、冷たく疼いている。紫の闇は今日も現れて、よだれが滴るのか、気持ちの悪いじゅるじゅるという音を休みなく立てていた。

 駆け出した音に影が表を向けた時には、しかし時はすでにあまりにも遅くて、深く、食い込んだ刃から溢れるように、青い血が四方に飛び散った。影は歯抜けの乞食に成り代わり、此の世のものではないとでも言いたいかのようにこちらを見ていた。至極冷静に、背に、腹に、喉に、手に、臓物に、額に、口に、死が全てのほつれを解くまで、ナイフをひたすらに差し込んだ。べっとりとした血は腐敗した悪臭を辺りに撒き散らして、後には残骸だけが残った。

 どんな事件も砂みたいなもんさ。そうだろ?

(続)