フクラム国

タルイのブログです

Portal 3-2 Freud

3.

 向日葵畑と商店街だけが、どうにか、死の季節に染まりきらずにいた。正反対の両者はこの町全体のバランスを保っているようで、この街そのものを成立させている天秤であるかのようでもあり、神聖なものと世俗的なものと、秩序と混沌と、現実と虚構と、人の関わりあるものの全てを、この街にもたらしているように思えた。

 向日葵は冬になっても黄金に色づいて、毛布のような優しさを被せてくれる。赤色のマフラーを外せば、首筋は露わになり、生肌は絹のような肌触りにそわそわと包み込まれてゆく。まるで全身に理想的な現実を流し込まれているみたいだ。性感帯を擦るように艶かしい生命力が冬と死を遠のかせて、指先の温度を確かなものにしている。世界に神がいるとしても、果たしてそれに何の意味があろうか。女性に子を孕ませることに、果たして何の意味があろうか。全ての救済が、全ての生命が、砂みたいにさらさらと消えていく。絶対的な愛が、艶やかに熟した官能が、肌を覆っていた。全身の筋肉が弛緩していき、夜明けまでの安らかな眠りを、自然の摂理にかなった形で与えてくれる。

 

 溶けていく意識の中で、ふと、何か聞こえるような気がして、耳を傾けると、やはりそれは笑い声であった。

 遠くに人影が見えた。光の当たり具合からか、不吉な紫色をしていて、気違いじみた笑い声をあげている。踊っているのだろうか。そろそろと、音を立てないように近づいてみる。徐々に姿があらわになって、行為があらわになると、わずかに息を飲んだ。

 紫色の人影は、向日葵を蹴り回って、踏み倒し、踏み潰していた。街から溢れてきたのか、どこからか生まれたのかわからないけれど、神聖な畑が暴虐的に破壊されていることは確かであった。少なからず動揺し、言いようのない震えが肌を駆け巡ると、周りの向日葵と僅かに振動させたけれど、影は気配に全く気づかないほどに、自己の行為からくる精神的な快楽に没頭していた。毒沼のようなおぞましい影がヒステリックな笑い声をあげながらが引き上げるまでの間を唖然として眺めた後、ただ、倒れ萎びた金色の毛布を、できるだけ丁重に土へと埋めた。言いようのない恥辱であった。

(続)