フクラム国

タルイのブログです

Portal 2-3 Kite

3.
 人間誰しも宝箱を持っていて、自分の心の中に、気付いているとも気づいていないとも問わず、その中に、沢山の思い出を、世界を、物語を持っている。出来事とともに、新たなものを手に入れることも稀にはあるが、大概は、幼少期に手に入れたものが形を変え、性質を変え、更新されていく。
 僕は宝箱の存在を多分、生まれた時から知っていた。そして幾らでも開閉することが出来たし、僕にとって新たなものなど何一つないその中身を一度は全部取り出して、仕切りを家具屋で購入し、整理してしまい直していた。
 僕と同じような宝物を、恐らくリリーも持っている。質感も大きさも、値段も得た場所も大切さも違うかもしれないけれど、色彩だけは同じものを、彼女と僕は、本当に同じように持っている。彼女の場合、中身の整理はしていないだろう。彼女は自分では、恐らく愚かしいほどに気が付いていないのだ。自分に何が出来るのかということ。どこに向かっているのかということ。僕は、教室の片隅でつまらなさそうに風船ガムを膨らませる彼女の姿を、そんな風にして、認めている。
 彼女の行動は手に取るようにわかった。言動も、勿論ニュアンスでしかないのだけれど、殆どのことは、彼女が口を開こうと神経に信号を送る前にはもうわかってしまって。
 僕はリリーと、本当によく似ている。男と女、という区分以外で人間を細分化するとしたら、おそらく僕と彼女は、かなりの部分まで、同じカテゴリに所属するのだろうと思う。
 
 それ故にふと思い返せば、ゴルゴダの丘に星が降ったあの夜、亜麻色の残滓と共に切なげに笑った少女は、季節を、感情を、孤独を、どうしようもなく苦しくなるほどに、精緻に反射し過ぎてしまっていたように、僕には感じられるのであった…。
 (続)