Portal 1-6 さよならフロンティア

7.
体に纏わり付いていた湿度は蒸発してしまっていた
雨の澄んだ匂いだけを残して
ゆっくりと重くなっていく瞼に、ほんの少し逆らうようにして
薄く目を開ければ
此処には常識も、生きる方法も、幸福も
何一つ浮かんではいなくて
湿度と共に蒸発してしまっていて
安心してゆっくりと目を閉じた。
この場には5人いて、5人だけがいて
其々が自分を持ちながら、この閉じた世界を許容している様が
この上なく深い眠りに、僕を連れて行った…
 
8.
「おーい」ふわふわとした声がする。
「ヘンリー」活発な声もして、僕はようやく目を開ける。ここはどこだ。そうか、僕はまだこの場所にいた。
「おはよー」フラニーの声がする。「雨がやんだよ」イワンの声もする。僕はゆっくりと立ち上がる。砂時計をひっくり返すみたいに、体内の重心が移動しきるのには一定以上の時間がかかり、ゆっくりと腰をあげた僕は、当たり前のように風邪を引いているようで、頭はひたすらにぼんやりとしていた。「おはよう」僕はようやくいくらかはっきりとした意識で持ってそれに答えた。
 陽はもう落ちかかっていて、辺りはうっすらと暗く、閉じた世界はもう既に、ゴルゴダの丘の一部となっていた。
「あれ、ヒューイは?」
「ちょっと前に帰ったよ」
「あいつ傘持ってたからさ」
そうか。僕は三人をぼんやりと見つめた。
「外に出よう」イワンが言った。フラニーが「うんー!」とはしゃぎまわるようにして、後にリリーが続き、そして少し経ってから、僕が続いた。
 (続)