暖かい葉をどければ

 少しだけ空が離れて見えました。もう昨日のことです。季節は冬に本格的に差し掛かったところで、身にまとう防寒具が増え、四肢の動きは外界に大きな制限を受けているようでした。知らぬ間に物寂しくなって顔を上げると、夜に藍色の粒子が氾濫していました。加えて、空をもう少しよく見ようと頭上遥か先の方へ視線を向けてみました。何かそこに些細な忘れ物をしたかのように。

 ふと、冷たさが頬に当たったようです。直感の確認と併せ加速度的に濃度を持った水滴が空から落ちてきて、辺りには雨独特の、獣の匂いが立ち込めました。地を連続的に打つ線状の落下行為は寂しさを紛らわせたように見えながら、しかし結果的に一層私の肌から温もりを奪っていくのです。私はたまらず彼女に電話をかけました。数秒たって柔らかい声が聞こえます。寒さを確認し合います。そこにはいつも感じている孤独とは全く別世界の所の侘しさを温める、感情の交わりがあるのでした。

 そう。ここ数ヶ月の私は誰か寄り添える人に出会うことを恐れ、恥じていました。自由さの根源にある、義務的な苦悩から逃げるように思えたのです。しかし孤独とはどうやら、隠れてしまうだけで無くなるものではないようです。私の表面的な寒さを和らげてくれる方がいようと、その女性と例えば一夜を過ごそうと、私の持つ孤独は色あせることなく、安堵の降り積もったその下に、しっかりと、存続し続けているのでした。どうも人間は、例えどのような幸せな環境にあろうと、その根源に内的な、普遍的な苦悶を持っているらしいのです。

 僕にも寄り添える、そんな人ができました。でも世界は今日もこんな風に、僕を一人にして通り過ぎていきます。でも、根源に近づくために必要な鋭さが増えた代わりに、少しだけ、楽になりました。