三題噺『密室、案内板、触覚』

※三題噺の題名は以下のサイトから獲得しています

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&ved=0ahUKEwj-q5ammOjJAhUO3WMKHSm0B4AQFgglMAE&url=http%3A%2F%2Fthree-theme.appspot.com%2F&usg=AFQjCNECX1aZOKnQ6f5CmTfXhjDcRVffJg&sig2=YGTtl45e8n00cIih3kHxQQ

 

 誰もこない。此処は湖の奥深く。井戸の反響すら失った暗闇。沼の底。いやいや、唯の僕の部屋だ。駅前を抜けて少し歩けばどこかしこに立ち並ぶ団地の、なんの変哲もない一室だ。本当に?この部屋は彼のそれとも同じものなのか。そりゃ僕の家具の配置が君と同じとは思わないさ。もっと根本的な話。この器の性質の話をしているんだ。
 この部屋から、僕だけが外へ行くことができる。扉はない。だから誰も入ることはできない。僕以外の誰もにとっての絶対不可侵入領域。密室だ。
 テレビが今日もがたがた鳴ろうとしている。パソコンが笑っている。水色の鳥が飛び交っている。僕の身体中を洗うように汚すようにして僕の触覚を愛撫していく。それは世界の案内板だ。どうぞこう歩いてください。そうすればあの場所へ着けますから。
 それらは外への入り口だ。書を捨てて街へ向かえ。街は今すごいことになっているぞ。ほら、今しかないんだ。うんうんと唸りながら僕の全身を性感帯にして、にゅるりにゅるりと触りしだいていく。ははぁん。外はヴァギナの大行進だ。どうだ?一つやっていかないか。いつだってそう。簡単に世界は喘いで喘いで一瞬の快感を与えていくのだろう。
 重みがないんだ。気持ちが悪いんだ。快感はそこにあるのだろうけれど。
 ははぁん。彼らはじゅりゅりと産声をあげて去っていく。濃縮された沈黙だけが、ふと、僕の頬を撫でる。
じゅるり