読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

L'après-midi d'un faune

タルイのブログです

そればっかりはのび太も出来杉君も変わらない

坂口恭平さんは子供の頃に、「この世界にはみんなが同じことをやる「学校社会」と、各々がそれぞれのことをやる「放課後社会」があると気づいた」らしい(『独立国家のつくりかた』より)。現象に名前をつけるのが好きだという坂口さんは、ネーミングセンス…

表面だけを板とパイプでこしらえた城みたいに

作家の中村文則さんが、「純文学というものをたくさん読んだ人には、自分の中に自然と海のようなものが出来上がる。」というようなことを言っていた。そういう海を持った人の書く文章や、成すことは、全て一度その海を通過するから面白く味がある、というよ…

Jimbo’s Lullaby-"children's corner"claude debussy

まだミミが4歳だった頃、寝巻きには大きなゾウの刺繍がしてありました。ピンク色の下地に、丸くかわいげがある、しかし少しだけぶきっちょな形のゾウは、ミミのお腹にしっかりとはりついています。歯を磨いている時も、本を読んでいる時も。しかし、あかりを…

The 1975-Chocolate

レベッカは世界が終わるまでの時間を数えながら、今日もマリファナをチョコレートのように噛む。すぐ其処にある世界の終わりを夢見心地でなぞりながら。 「散歩に行きたい」 「どこへ」 「どっか。私もお前も誰も知らないところ。」 レベッカは憤然とソファ…

少女E

君からの短くて雑な文面に顔がにやけるあたしがいる。多分気分で暇な時だけ、ただ頑張ってる息抜きだとか、疲れた自分への甘えだとか、そう言った逃げる場所としてあたしはいるんでしょうけれど、 そうだと分かっていても、何方もお互いの気持ちの良いところ…

Fastener

あと数分で訪れる、寒さを救う総武線を震えながら待っている。北風は容赦無く肌に残る温度を奪っていく。嗜む程度のステップを踏んで、温度が死なないようにする。タヒチの民に説明してやりたい。イッツァウィンター。これが冬だよタヒチ・ピーポー。 今日は…

The classroom leader of eyeglasses

遠く向こうで、彼女が手を振っている。太陽で薄く白ずんだ視界の、遥か遠く向こうの方で。 きっと、もう「さようなら」と、たったそれだけの言葉が足りないだけなのだろう。日が落ちて夜がくれば、ここが何処だかわからなくなって、きっと、君とすれ違ったあ…

顔を上げれば空が微笑みかけている 正しさや、強さや、大切さを定めることもせずにただ空は、5年前と背丈の変わらない僕を写している この体で短い命を生きること、束の間の一生を借りること、全てを知って見守るように、空はそこに佇んでいる 今まで出会っ…

Impressionism

海が混じり合うように折り重なって、静かに時を刻んでいる。両手を空に伸ばしピンと背中を張る彼女の口元の、太陽を直に浴びた笑みに目が眩んだ。人気のない臨海公園は、やけに近未来的な街灯の均等で果てのない群列や、月の満ち欠けを示す儀式めいたオブジ…

Sunset

忘れられていた公園のブランコを揺らしながら「この世界はもう」と笑う少女の横で、頰を泥で汚した少年は「もし自分が」と、魔法のような虚構の切れ端を考えている。 夕暮れ時に一瞬間訪れた赤紫の空の下で、「ここには何もないね」と笑いながら、それでも二…

All right part 19

単純な退屈に飽きた時には 酷く不器用なステップで 言葉遊びの中を踊る 音楽が解けるように夜を満たすまで 形を与えることの意味を忘れて 無責任に言葉を並べれば 大切を忘れた夜を踊り明かせる 音楽があれば大丈夫と彼はいう。 All right All right 猿が口…

雄弁な社会

世の中には自慰行為が溢れている。 身を剥き出しにした承認欲求と往往にして肩を組み、様々な美辞麗句を並べて作り上げる一時的な絶頂と、先行きも価値もない快楽と。 集団における自慰行為はタチが悪い。 僕らはリーダーを名乗ってイベント全体主義を掲げる…

11/24 切れ端

全てをゼロに戻すような雪が降った。複雑に絡まった人との関わりを、絶え間なく波打つ感情を全てリセットするような雪だった。街は白く染まっていく。白で上書きされていく。人工的に植えられた道路脇の植物も、選挙戦のポスターも其処にはない。意味は白に…

11/10 切れ端

僕は彼女が裸になる所を想像してみた。それは非常に緩やかな速度を持ちながらも、とても好意的に検討することのできる事柄だった。極めて静かに、まるで1960年代のハガキばかりが充実している雑貨屋を何の気無しに覗いた時みたいに。始めに、果たしてそれは…

継続

継続は力なりというけれど、継続以外では力など手に入らない、とすら感じる。 なんらかのものを習慣化し、継続していくと、「気にしなくてもできる」という段階に達する。所作が無意識化する。その現象は、言うなれば、身体のもつ「自然」という状態を開拓す…

まっすぐにしか書けないこと

イチゴジャムの食パンと甘々のコーヒーは、今日もまた生活のねじを巻く。 単調な朝だ。 電線の上で望遠鏡を覗くのは、あの日忘れたはずの女の子。 両手で抱えて、何かを確認するかのように。 重そうに。 僕は、そんな風に未来を覗く彼女の、笑えるくらい不器…

島国のひろがり

空と言われれば、やはり育った街のものを思い浮かべる。 僕にとってそれは 電線とデパートに視界を阻まれた僅かな背景 空が綺麗だなんて ありふれたことのようだけれど 確かに狭い狭い夕空は、今日も感動を生んだ あの空は、果たしてどんな風に広がっている…

色彩は女の子と

君といると、世界はいつだって、カラフルに見えた。 大げさな表現ではない。 色づく。 まるで生きているみたいだった。建物も、道行く人も、工事現場も表札も。 僕は君のことを今でも思い出しながら、こうして文章を書いている。 多分、どんな文章を書こうに…

灯り 1

8月5日は、湖の周りに、蛍が出る。そればかりが頭にあった。 当時小学2年生だった私は、平生夜8時以降の外出を禁止されていた。8月になってからというもの、格好の餌を与えられた少年の想像力は、光筋が暗闇を駆けて行く様を幾度となく思い描いた。部屋に生…

10月の風景

秋を多分に含んだ風は、遠のいていく電車から逃げるように、私の頰へと届く。 2番線ホームにはまばらな人影。特有の透明さをもった声は、おそらくじゃれあう高校生たちのもので、それはまるでわずかに残った夏の手持ち花火みたいに、この味気のない空間にカ…

次のバイト代が入ったら、飯行かないか?

自分らしく生きているという感触が、こんなにも素直に受け入れられるのは初めてだ。 過剰な表現ではない。 「生まれ変わったみたいだ」 それは前の連載のおかげかもしれないし、9月の5日間をパリで過ごしたからかもしれないし、或いはgalileo galileiが解散…

Section6 追い風 決意 小旅行(2)

時間は過ぎてみれば一瞬のことで、振り返ってみれば、其処には、掠れるような儚さが暖かく残っていた。 私の重大だと信じてきた一歩は、踏み出せてしまえば意外と呆気なく、それでも何か確かに、得たものと、失ったものと、届いたものと、見捨てたものがあっ…

Section6 追い風 決意 小旅行(1)

張り詰めた空気がリハーサルを覆って、私たちは静かに最後の確認をする。 「緊張してるのか」 「ああ。悪いか」 「いや、俺もだ。ミズキちゃんは」 「うん。してる」 「なあ、」リーダーの声がする。 「もう、大丈夫だ。大丈夫だ。うまくいく。見せてやろう…

Section5 景色 諦観 最後の信頼(2)

2. 私は、あまり人を信用しない性質で、自分のそんな性格を決して否定するつもりはないけれど、困ったことに自分のことすら、何かと信用していない節があった。そりゃ自分が完璧に信用できる人生なんてあるとは思わない。しかし、何かいつも、一歩を躊躇し、…

Section5 景色 諦観 最後の信頼(1)

1. 自転車を飛ばした先にある夜は、確かに、ここで見るものとは違うのだろう。どこへだって、僕らは多分、行くことができるのだ。何も持っていないということを、知ってさえいれば。 何が僕の人生を苦しめて、何が僕のために苦しんでいるのか、想像するだけ…

Section4 塾 嘘 深海の富(2)

2. 海星先生の話を、どんな人生を送ってきたら、こんなことを怖がらず言えるのだろうと、変な驚きをもって聞いていた。しかし少し経って、もしかしたら自分が唯臆病で怖がりだっただけなのかもしれないと、直ぐに恥ずかしくなったりもして。 生きていて良か…

Section4 塾 嘘 深海の富(1)

1. 「先生、私どこの大学に行けるんですか?」 「どこへだって行けるよ」 「でた、頭いい人はちがうなあ、ほいほい」 「行きたい場所は?」 「うーん、特にはないけれど」 「けれど?」 「普通のところには行きたくないかなあ」 「そうだね。向いてないから…

Section3 学校 可愛さ RPG(2)

2. 聖橋口には既に三人が待っていて、私は心底すまないというように「ごめんごめん」と笑う。 「謝れ」と言うリーダーに身を任せて「スンマセンでした」と謝る私を三人は笑って、橋を渡った先のスタジオへと向かう。途中四人でドクターペッパーを買い、5スタ…

Section3 学校 可愛さ RPG(1)

1. 「いいね」をもらうために、彼らはどんなことだってできるのだろう。 私は別に彼らのことを嫌いだとか、彼らより私の方が賢いだとか、そんな風に言うつもりはないけれど、そして「いいね」をもらうために全力で頭をひねる毎日もそれはそれで面白いと思う…

Section2 古本屋 Bach 夜の漂流(2)

2. 家に帰ればある程度片付いた机に横たわるようにMacが置かれていて、それを開かなければならないと知りながら、それでも逃げるようにヴァイオリンケースに手を伸ばす。 少し気が荒ぶっている、そんな日は意外といい文章が書けるものだけれど、今日ばかりは…

Section2 古本屋 Bach 夜の漂流(1)

1. 一人でいるのは嫌いじゃない。なんだか割と面白くて、その場所は孤独とは何かが違っていている。孤独と一人の違いはなんだ。寂しさの度合いだろうか。でもなんにせよ、ひとりは認識次第で孤独になる。その逆よりも、ずっと簡単に。 吉祥寺には古本屋が、…

Section1 吉祥寺 塾 海の底(3)

3. 何が怖いって、全部変化していくこと。季節も、好みも、人との関係も、止まっていて欲しいと願う間もなく、目まぐるしく変わっていくこと。「まだ、あと少しだけ」「ほんの少し待って」なんて感情が呆気なく季節に飲まれて、置き去りにされてしまうこと。…

Section1 吉祥寺 塾 海の底(2)

2. 「分かるものか」ミズキは少しばかりコミカルに、けれども真剣な顔をしてシャーペンを放り出した。少しばかり空間よりもおおきなその声は僕を強引にこの場所に引き戻す。 「落ち着きたまえ」 「落ち着けないたまえ」彼女のそんな即答は、彼女自身のツボに…

Section1 吉祥寺 塾 海の底(1)

1. ここではないどこかへ、なんて、ありふれた言葉はもう自分で唱え飽きてはいるのだけれど、それでも知らない街へ行きたいと、今もずっと、思っている。見たこともない街の誰も知らない夕暮れや、いつまでも解けることのない靄のかかった風景の中で、捉えき…

海と夜がつながる場所で

新連載です。 宜しくお願い致します。

線で繋がる2分間

僕はある程度器用にものをこなすことができて、だからいつも、何かとごまかして生きてこれたし、大概のことはそれなりの成果を上げることができた。 でもそれって、果てしなく不器用だ。 だから多分、言葉に行き着いたんだと思う。 それは誰でも持っていて、…

少女 D

私の中にある海を生きるために浪費して、何を得たかといえば、何処にでも価値のある富だけだ。 段々と、小さくなっていく。 私を追い越す何かは、果たして世界なのか、愛なのか、夢なのかわからないけれど、それでも貴方は先に行ってしまう。 他人の背中に乗…

少女 C

知らない街の隅にある、私だけの宝物に会いに行くために、私が蓄えてきた季節を全部捨ててしまおう。 無駄だと言われることを恐れては、私だけの街になんてたどり着けるはずはなくて、君の言う幸福だとか、自由だとかは、とても価値がありすぎるように思うの…

少女 B

あの場所に行くことを求めている。 ここよりもっと高く空が浮かんでいて、私の「好き」が「嫌い」になるより早く景色が移り変わっていくあの場所が、私の透明な指先に空を塗るのを待っている。 私の頬は、君には見えない物質を排出して、君を密やかに閉じ込…

少女 A

帰り道は黄昏時で、いつの間にか周りから何もかもが消えている。 風も雲も夕焼けも、よそ見をしているみたいだ。 だから私は、自分だけの歩幅で好きな歌を歌う。 全く、私の世界は今日もこうやって浪費するばかりで、味方をすることを知らない。 私はもっと…

総武線

久しぶりに各駅停車に揺られながら分厚めの本と向かい合い、少し疲れたらぼんやりと流れ来る景色を眺める、なんて、そんな柔らかい毎日が訪れた。 神経を落ち着かせるのが恐らく人より下手で、それは心配性と言えばそれまでかもしれないけれど、大事なものが…

Portal あとがき

どんなに書くことが思いつかなくても、どんなに徒労を重ねただけの駄文であっても、毎日更新し続けて、あの街の終わりを見れたことに一先ずホッとしている。 乱雑な実験を積んでいくと、今ぼくが立っている、狂おしいくらいに現実的な地面が少しずつ見えてき…

Portal 9-1 Imaginary Friends

起きて 誰かが言ったような気がする。 優しい、女の人の声だ。 カーテンがゆったりと揺れていた。 外から心地の良い、凹凸をならすような風が吹いている。無神経な都会の匂いは、嗅ぎ慣れた筈のものながら、今日ばかりはよそよそしい。 じわっと汗をかいた寝…

Portal 7-3 スワン

湖の中に飛び込むと、衣服と肌の間を真っ黒な液体が満たした。足は無事に底につき、私は幾らか安心して、近づいてくる彼を、両手を伸ばして出迎える。 「リリー」笑った彼の顔には焼け痕が血をにじませていた。私の肌の同じ部分もチクチクと痛み、彼のここま…

Portal 6-3 Good Shoes

銀色の列車 肌はヒリヒリと熱く、肺は酷く薄い酸素で呼吸を繰り返した。星が爆散する轟音と、焼け焦げる草原の匂いと、煌々と揺れる炎の柱とが五感に絶え間なく迫る。か弱い体を持つ僕は、ちっぽけであるどころか、まるで教室に迷い込んだアリのような場違い…

Portal 7-2 スワン

変な熱気に目覚めると、一瞬この場所がどこだかわからなくなって、ああ。スワンボートの中だった、なんて気付いた次の瞬間には、ごうごうとした音が否応なしに耳に襲いかかり、本能的に、世界が終わりかけてることに気がついた。 空が秩序を失って混乱してい…

Portal 8-2 星を落とす

「ねえ、イワン」 そうか。 「僕らはどこから来たのだっけ」 僕はいつも布団に潜って 「僕らは本当に神様から生まれたのかな」 考えていた。 「僕らはどうやって生まれてきたんだろう」 星の降る街のことを。 黄金のひまわりのことを 夢見ていた。 「もしか…

Portal 8-1 星を落とす

昔は大人というと、自分たちとは別の人種であるような気がしていた。草原をかけている時に、ベッドの中で物語を考えている時に、友達と二人だけの秘密を見つけた時に、友人だけで「今が一番幸せかもしれない」というような一時にたどりついた時に、自分が大…

Portal 7-1 スワン

今日も一つ歌ができた。私の好きな歌ができた。 多分いつもみたいに、メロディだけは忘れないんだろうな。 ここは街の果て。君には決して来れないところ。私だけの場所。 良い場所なんだ ここは、とても良いところ。 何をしても、何に興味を持っても構わない…

Portal 6-2 Good Shoes

ゴルゴダの丘 今日もそこは美しかった。一面の空は、あの日みたものより幾らか狭いように感じたけれど、やはり流星は僕らを暖かく迎えて、ひまわりも金色に輝き、そしてあの日四人だった僕らは、今ではもう、二人になっていた。 「どうしてだろうな」イワン…