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Here Comes The Sun and I Say

タルイのブログです

Section3 学校 可愛さ RPG(2)

2. 聖橋口には既に三人が待っていて、私は心底すまないというように「ごめんごめん」と笑う。 「謝れ」と言うリーダーに身を任せて「スンマセンでした」と謝る私を三人は笑って、橋を渡った先のスタジオへと向かう。途中四人でドクターペッパーを買い、5スタ…

Section3 学校 可愛さ RPG(1)

1. 「いいね」をもらうために、彼らはどんなことだってできるのだろう。 私は別に彼らのことを嫌いだとか、彼らより私の方が賢いだとか、そんな風に言うつもりはないけれど、そして「いいね」をもらうために全力で頭をひねる毎日もそれはそれで面白いと思う…

Section2 古本屋 Bach 夜の漂流(2)

2. 家に帰ればある程度片付いた机に横たわるようにMacが置かれていて、それを開かなければならないと知りながら、それでも逃げるようにヴァイオリンケースに手を伸ばす。 少し気が荒ぶっている、そんな日は意外といい文章が書けるものだけれど、今日ばかりは…

Section2 古本屋 Bach 夜の漂流(1)

1. 一人でいるのは嫌いじゃない。なんだか割と面白くて、その場所は孤独とは何かが違っていている。孤独と一人の違いはなんだ。寂しさの度合いだろうか。でもなんにせよ、ひとりは認識次第で孤独になる。その逆よりも、ずっと簡単に。 吉祥寺には古本屋が、…

Section1 吉祥寺 塾 海の底(3)

3. 何が怖いって、全部変化していくこと。季節も、好みも、人との関係も、止まっていて欲しいと願う間もなく、目まぐるしく変わっていくこと。「まだ、あと少しだけ」「ほんの少し待って」なんて感情が呆気なく季節に飲まれて、置き去りにされてしまうこと。…

Section1 吉祥寺 塾 海の底(2)

2. 「分かるものか」ミズキは少しばかりコミカルに、けれども真剣な顔をしてシャーペンを放り出した。少しばかり空間よりもおおきなその声は僕を強引にこの場所に引き戻す。 「落ち着きたまえ」 「落ち着けないたまえ」彼女のそんな即答は、彼女自身のツボに…

Section1 吉祥寺 塾 海の底(1)

1. ここではないどこかへ、なんて、ありふれた言葉はもう自分で唱え飽きてはいるのだけれど、それでも知らない街へ行きたいと、今もずっと、思っている。見たこともない街の誰も知らない夕暮れや、いつまでも解けることのない靄のかかった風景の中で、捉えき…

海と夜がつながる場所で

新連載です。 宜しくお願い致します。

線で繋がる2分間

僕はある程度器用にものをこなすことができて、だからいつも、何かとごまかして生きてこれたし、大概のことはそれなりの成果を上げることができた。 でもそれって、果てしなく不器用だ。 だから多分、言葉に行き着いたんだと思う。 それは誰でも持っていて、…

少女 D

私の中にある海を生きるために浪費して、何を得たかといえば、何処にでも価値のある富だけだ。 段々と、小さくなっていく。 私を追い越す何かは、果たして世界なのか、愛なのか、夢なのかわからないけれど、それでも貴方は先に行ってしまう。 他人の背中に乗…

少女 C

知らない街の隅にある、私だけの宝物に会いに行くために、私が蓄えてきた季節を全部捨ててしまおう。 無駄だと言われることを恐れては、私だけの街になんてたどり着けるはずはなくて、君の言う幸福だとか、自由だとかは、とても価値がありすぎるように思うの…

少女 B

あの場所に行くことを求めている。 ここよりもっと高く空が浮かんでいて、私の「好き」が「嫌い」になるより早く景色が移り変わっていくあの場所が、私の透明な指先に空を塗るのを待っている。 私の頬は、君には見えない物質を排出して、君を密やかに閉じ込…

少女 A

帰り道は黄昏時で、いつの間にか周りから何もかもが消えている。 風も雲も夕焼けも、よそ見をしているみたいだ。 だから私は、自分だけの歩幅で好きな歌を歌う。 全く、私の世界は今日もこうやって浪費するばかりで、味方をすることを知らない。 私はもっと…

総武線

久しぶりに各駅停車に揺られながら分厚めの本と向かい合い、少し疲れたらぼんやりと流れ来る景色を眺める、なんて、そんな柔らかい毎日が訪れた。 神経を落ち着かせるのが恐らく人より下手で、それは心配性と言えばそれまでかもしれないけれど、大事なものが…

Portal あとがき

どんなに書くことが思いつかなくても、どんなに徒労を重ねただけの駄文であっても、毎日更新し続けて、あの街の終わりを見れたことに一先ずホッとしている。 乱雑な実験を積んでいくと、今ぼくが立っている、狂おしいくらいに現実的な地面が少しずつ見えてき…

Portal 9-1 Imaginary Friends

起きて 誰かが言ったような気がする。 優しい、女の人の声だ。 カーテンがゆったりと揺れていた。 外から心地の良い、凹凸をならすような風が吹いている。無神経な都会の匂いは、嗅ぎ慣れた筈のものながら、今日ばかりはよそよそしい。 じわっと汗をかいた寝…

Portal 7-3 スワン

湖の中に飛び込むと、衣服と肌の間を真っ黒な液体が満たした。足は無事に底につき、私は幾らか安心して、近づいてくる彼を、両手を伸ばして出迎える。 「リリー」笑った彼の顔には焼け痕が血をにじませていた。私の肌の同じ部分もチクチクと痛み、彼のここま…

Portal 6-3 Good Shoes

銀色の列車 肌はヒリヒリと熱く、肺は酷く薄い酸素で呼吸を繰り返した。星が爆散する轟音と、焼け焦げる草原の匂いと、煌々と揺れる炎の柱とが五感に絶え間なく迫る。か弱い体を持つ僕は、ちっぽけであるどころか、まるで教室に迷い込んだアリのような場違い…

Portal 7-2 スワン

変な熱気に目覚めると、一瞬この場所がどこだかわからなくなって、ああ。スワンボートの中だった、なんて気付いた次の瞬間には、ごうごうとした音が否応なしに耳に襲いかかり、本能的に、世界が終わりかけてることに気がついた。 空が秩序を失って混乱してい…

Portal 8-2 星を落とす

「ねえ、イワン」 そうか。 「僕らはどこから来たのだっけ」 僕はいつも布団に潜って 「僕らは本当に神様から生まれたのかな」 考えていた。 「僕らはどうやって生まれてきたんだろう」 星の降る街のことを。 黄金のひまわりのことを 夢見ていた。 「もしか…

Portal 8-1 星を落とす

昔は大人というと、自分たちとは別の人種であるような気がしていた。草原をかけている時に、ベッドの中で物語を考えている時に、友達と二人だけの秘密を見つけた時に、友人だけで「今が一番幸せかもしれない」というような一時にたどりついた時に、自分が大…

Portal 7-1 スワン

今日も一つ歌ができた。私の好きな歌ができた。 多分いつもみたいに、メロディだけは忘れないんだろうな。 ここは街の果て。君には決して来れないところ。私だけの場所。 良い場所なんだ ここは、とても良いところ。 何をしても、何に興味を持っても構わない…

Portal 6-2 Good Shoes

ゴルゴダの丘 今日もそこは美しかった。一面の空は、あの日みたものより幾らか狭いように感じたけれど、やはり流星は僕らを暖かく迎えて、ひまわりも金色に輝き、そしてあの日四人だった僕らは、今ではもう、二人になっていた。 「どうしてだろうな」イワン…

Portal 6-1 Good Shoes

街 崩れ落ちている。僕らの街には、まるでそれが絶対的な善業だと言わんばかりに、紫色の動物たちが次々と押し寄せて思い出をなぎ倒し、代わりに白色の不気味な建物を次々と建設していった。 「僕らの街が」イワンが言う。 「塗り変わっていく」 街に対して…

Portal 5-2くじらの骨

さようなら、というのは、いざその時になってみると、殊の外怖かった。例えば二度と会えないとしたら、なんてことを考えると、多分今が一番大きな、けれどいつまでも続くんじゃないかと考えてしまうような痛みを、内側の方にふつふつと感じた。 「人がいない…

Portal 5-1 くじらの骨

君がこの街を去るというのなら 僕の気持ちなんてものは、どうでもいいのかもしれない 夏が過ぎて、冬になり、また次の季節が始まる前に 君はこの街を去るというのだから 「見送りありがとう。」フラニーは幾らか申し訳なさそうに言う。僕にはそれが他人行儀…

Portal 4-6 Swimming

10. 「親?」 フラニーが話したのは、生まれた頃の街並みと、自分を常に見守り、育ててくれる、自分を産んだ大人と一緒に過ごしているという、そんな記憶。 「くじらの骨はね」彼女は言う。その白くて小さなかけらは、「自分を産んだ大人」がちょうどこんな…

Portal 4-5 Swimming

8. 夜は静かに訪れた。ランプの灯りと、小さめの焚き火とは、街の色とりどりのネオンに比べると遥かに質素で、自然で、簡潔な灯火だった。ぼんやりと闇に浮かんだ体躯は思いの外大きな影で、そのことは「大人になっている」ということを漠然と僕らに悟らせて…

Portal 4-4 Swimming

6. ゴポゴポゴポ…… 海が昔から怖かった。僅かにぼやけた海底、少し掻き分ければ大きな丸い目がギロリとこちらを睨んでいそうな海草群、本当に人間に害がないのか心配になるようなイソギンチャク、突如現れる巨大な魚。決まってやけに大きく見えた。こちらへ…

Portal 4-3 Swimming

4. 当日は最後にふさわしく、良く晴れた。僕らは総勢4名でフィナーレを締めくくろうと試みていたけれど、しかし自転車所持者は2人にとどまっていて、仕方なく、危険極まりない二人乗りという手段を敢行する。それなりの物量を持った荷物を不安定に背負いなが…

Portal 4-2 Swimming

3. 海へ行こうと決まったその日、星が空よりも明るくなった頃に僕らは学校を後にして、晩御飯の香りが漂う帰り道を、いくらかゆっくりと歩いた。次の曲がり角でリリーが、交差点でイワンが、と、そんな風に一人一人自分の家へと帰っていく様は、儚くもありな…

Portal 4-1 Swimming

1. 開け放している窓から蝉の声はうるさすぎる程に聞こえ、日差しは僕たちの放課後を照らし、制服を映し、いくらか眩しがらせもした。強烈に僕らを刺激する太陽は、僕らを室内に閉じ込めるようであったけれど、そんな仕打ちに却って心地よさを感じてもいた。…

Portal 3-5 Freud

6. 砂浜にある小さな駅へと向かうまで、怯えるように手を繋いだ。孤独が初めて、内側から感じられた。 オジジの薄汚い掌は確かな暖かさを持っていた。向日葵よりも些細で、微かな温度は、しかし金色の毛布が持たない確かさを持ってもいた。 砂浜に着くと、既…

Portal 3-4 Freud

5. 日が変わって時間が経った後、老人を揺り起こす少年の影があった。 「死んだんじゃないだろうな」 痩せた体躯は不器用にしなびている。 「おい、オジジ、オジジ」 返事はない。 「死んだのか」 そう呟くと同時に、ゆっくりと老人は起き上がった。 「お前…

Portal 3-3 Freud

4. 明くる日もまた冬で、夜は当たり前のように訪れ、相も変わらず、紫のキリンは街を淡々と襲っていた。キチガイたちは気がつかないのか、或いは興味がないのか、不気味にヘラヘラと笑っていた。彼らはおそらく、飲み物の力で記憶を無くすことによって、この…

Portal 3-2 Freud

3. 向日葵畑と商店街だけが、どうにか、死の季節に染まりきらずにいた。正反対の両者はこの町全体のバランスを保っているようで、この街そのものを成立させている天秤であるかのようでもあり、神聖なものと世俗的なものと、秩序と混沌と、現実と虚構と、人の…

Portal 3-1 Freud

1. 居住地から見える星々は硝子の粒子だ。空虚な砂子みたいに、光を内包することなく反射している。地上には、冷え切った大気がずっしりと沈殿して、呼吸が生む真っ白な息は、大気をほんの少し可視化すると、矮小な存在をぽっかりと浮かび上がらせた。冬には…

Portal 2-7 Kite

10. 陽は既に暮れかかっていて、線路下にまでも、躊躇なしに光を注いでいた。刷毛を手に持った僕らは、真白な壁を凝視しながら、あれやこれやと考えている振りをした。どちらかが何かを始めれば、それがどんな形だって、自分の描くべき形がわかるはずだ。だ…

Portal 2-6 Kite

8. 夏は一段と高まっていき、遂に太陽が飽和状態に達したその日、イワンはありったけのペンキを購入した。人の良さそうな老人が質素に続けている画材屋で、少しだけ思案しながら、彼女の好きそうな色を2色選んで、たっぷりとバケツに入れたそれを両手に河川…

Portal 2-5 Kite

6. 背後でイワンの声が聞こえた。「やあ」相変わらずの低い声だ。誰かのために取り繕うことをやめてしまったみたいな声。イワンはずいぶん前から私の後ろにいたらしい。「ん?」と涼しげに答えてはみたけれど、心臓は聞きとれる程にバクバクしていたし、多分…

Portal 2-4 Kite

4. 小鳥を飼っていたことがある まだ小さい頃に。ううん、今君が思い描いたよりは、ほんの少しだけ大きくなったとき 鳥かごの中でとぼけていた 男の子みたいに 夏が好き 多分どんな季節よりも 外にいることを、みんなが許してくれるから みんなって? 君以外…

Portal 2-3 Kite

3. 人間誰しも宝箱を持っていて、自分の心の中に、気付いているとも気づいていないとも問わず、その中に、沢山の思い出を、世界を、物語を持っている。出来事とともに、新たなものを手に入れることも稀にはあるが、大概は、幼少期に手に入れたものが形を変え…

Portal 2-2 Kite

2. 今日も彼女はそこで絵を描いていた。 僕らの街を通る唯一の線路は、砂浜と海を渡って他の街へと通じている。こんな世界の隅っこみたいな場所にそうひっきりなしに電車が訪れるわけもなく、時刻表というものなんて存在していないから、この街に住んでいる…

Portal 2-1 Kite

1. 川肌に夏が反射した。頰に突き刺さり、思いの外鋭く、僕を眩しがらせた。セミが、カエルが、最もやかましく響き合う、青空の、海の、向日葵の季節が、今年度もやってきた。 堂々とした太陽は、全生命をかなり絶妙な加減で照らしてくれているのだけれど、…

Portal 1-7 さよならフロンティア

そして僕らは黙り込んで、薄暗くなった空を、バスにもたれかかるようにして見つめた。藍色の空に数々の星が、まるで雪を待っているかのように暖かく輝いていて、眼下に広がる大海は、落ち行く夕日を、最期の一滴まで自分のものにしようと企んでいるようであ…

Portal 1-6 さよならフロンティア

7. 体に纏わり付いていた湿度は蒸発してしまっていた 雨の澄んだ匂いだけを残して ゆっくりと重くなっていく瞼に、ほんの少し逆らうようにして 薄く目を開ければ 此処には常識も、生きる方法も、幸福も 何一つ浮かんではいなくて 湿度と共に蒸発してしまって…

Portal 1-5 さよならフロンティア

6. 「運転席にヒューイがいるよ」と彼女は言った。 「ヒューイ?そう」イワンはあまりどうでもいいようだった。 数瞬。 「僕、行ってくるよ」と僕は、運転席に向かった。イワンにとって、リリーはなんらかの居場所であるらしい。僕にとって、それは、割と手…

Portal 1-4 さよならフロンティア

5. リリーはいつもどんな風だっただろうか。彼女は確か、幾らか小柄だった。しかし、元気で、人を見上げるような素振りを見せることなんてまずあり得ないばかりか、世界には私一人しかいない、というような目の使い方をしてさえいたから、例えば彼女の背丈を…

Portal 1-3 さよならフロンティア

3. 雨はその丘へ、染み入るように降り始めていた。降らせていいものかと何者かが躊躇したようにまばらだったそれは、急速に陰鬱な影を落とした雨雲たちによって確信を得たのか、僅かな間にはっきりとした音を立てる。隣でぼうっと立ちすくむイワンをぼんやり…

Portal 1-2 さよならフロンティア

2. 課外授業と銘打った「ゴルゴダの丘」への遠足は、それがこの街全体の学校における通例となりすぎているが故に、教員たちはもちろん、生徒たちにまで、一種のマンネリズムを与えている。ゴルゴダの丘と向日葵畑は街の随一の観光地として知られ、また唯一の…