にっき7

風邪気味で向かう神戸日記 8月某日 東京もそうだったが、ここもどんよりとした曇り空だ。比較的ラフな格好をした人々は(少なくとも表面上は)仲睦まじそうに、駅前の移動販売車で売られていた際にはあれほどまでに素通りしていたはずのジャンキーな食品たちを…

にっき5

胃腸炎は治らない 8月某日 きゅうりの裏はナスで、柿ピーナッツの裏はとうもろこし。じゃあ絆創膏の裏はなーんだ。 というなぞなぞを謎の方から思いついた。こうなるとなんとかして答えを見つけたいところなんだけど、なかなかにむずかしい。ナスときゅうり…

にっき4

私は嫌な子なんだろうな 8月某日 フルートのパートリーダーになってから、前の部長と二人でサンマルクカフェに遅くまでいることが多くなった。今日もそんな日で、部長は受験勉強で忙しいとかいいながら、私の話に付き合ってくれて、自分の場合はこんな風に考…

にっき3

夏…… 8月某日 電車のクーラーは寒い。友人が夏だからといって自動販売機からあったか〜いをなくすのは如何なものか、と言っていた。僕は心の底であまり好きでない流行語を呟く。「それな。」でも寒いからってクーラーがないのも困る。クーラー無しに生きてい…

にっき2

海底生物 8月某日 胃腸炎だと診断される。医師によると胃がグルギュルしてるらしい。グルギュルっていう海底生物いるだろうなぁと何の気なしに思う。 お腹はやっぱりそれなりに痛くて、食べ過ぎと飲みすぎとありとあらゆる良くないものが合わさって胃をキリ…

にっき

マサラタウン 8月某日 日記を書こう、なんて全国の人々と同じような決心を固める。そんな志の強度がなくて3分で諦める(僕の志は振動するマッサージ機に乗って行う線香花火くらい消えやすい)。 チョチョイときょうのできごとを書こうと思う。 ぼくはそれもう…

サキ:たしかさと外国

サキは、市民プールの見物席で外国の本を読んでいました。なんだか必死で何かをする必要がなくなった途端、何もかもどうでもよくなってしまった感じがして。 本を丁寧に読む方法は、手をきちんと洗うこと。って友達に言ったら、うまく伝わらなかったのを思い…

ぼくらは夜のいきもの

最近はずっと雨が夕方辺りまで降っていて、今日もまた、湿度はむんむん気圧はひくひく髪の毛もじゃもじゃといった具合。 6月の気圧の低い日は、ほんらいはサンショウウオみたいに這って生活するべきなのに、無理をして、立って歩いてるんじゃないのか。そり…

ジムとのかくれんぼ

ジムはとても優しい子です。わからない人にはわからないかもしれないけれど。彼の優しさは、ものすごく純粋なものだから、大声で思っていることをすぐに口にしてしまったり、何かにいつも焦っているような人には、うまく感じることができません。だから他な…

井の頭公園13:30

人は分かりやすくするための決めごとを長年かけて作ってきた。けれど自然は自然と混沌としていて、そんなものの中に、分かりやすく線を引いた分だけ、世界は矛盾だらけになってしまった。 蔓延する矛盾と自分との折り合いをつけていくことがアイデンテイテイ…

エターナルシュレッダー中のメモ

愛の教科書がもしあったら、きっと中身を冷めた笑いでパラパラ見ながら、結局は破いて捨てる気がするけれど、それでも「これが恋だ」とか、「それが愛だよ」とか、そんな風に、自分の気持ちを整理したくなる人はたくさんいるだろうから、やっぱりどこかで、…

できるだけ真っ直ぐなうそ

例えば君とどこまでも遠くまで歩いて行けるとして 僕らのたどり着く街が、ずっと昔から願っている 優しさと想像力に満ちた場所だとしたら そしたらいっそ、僕らはその場所からはぐれるようにして またこの場所に戻ってくるのかもしれないし もしかしたらずっ…

Sea and The Darkness Ⅱ

黙ってても生きていける僕らは、何故そうまでして言葉を交わすのだろう 何故文字を書くのだろう。音を鳴らし、絵を描き、体を揺らすのだろう 義務でもないのに、何かを伝えようとするのはなぜだろう どうしようもなく不揃いな僕たちは、闇の中で形を溶かす …

嵐のあとで/Aftermath

「ばいばい」「ばいばい」遠くなった君が振り返らずに帰っていく様を、僕は今でも、鮮明にとは言えないけれど、印象深く思い出すことができる。 夏はいつの間にかもう、すぐ近くにあるらしい。やがて梅雨が訪れて、それが去ってゆけば、あの日みたいな夏が来…

日曜/Her Surprise

人一倍頑張ろうとする君のことを僕はよくしっているつもりで、そんな風に生きている君のことを、美しいだとか、偉いとか、誇りに思うだとか、たくさん褒める大人の人や同級生たちの存在を知ってもいる。彼らの期待になんとかして答えようとすることも、人に…

燃える森と氷河/Defferent Kinds

深く沈んだ夜の中で、変な夢が終わるのを当てもなく待っていた。君もちゃんとそこにいる。青い目と金色の髪と、不機嫌そうな唇の端。 誰にも言えないでいた湖の奥にあるぼくだけの隠れ家で、過ぎていく四季を過ごしながら、君と何人か子供を作った。男の子も…

鳥と鳥/Bird Cage

三番通りの坂を自転車で下りながら、彼女は毎日のように笑っていた。 あの頃の彼らには怖いものなど何もなくて、代わりにあったのは、世界を覆すような秘密と、戦いだらけの毎日と、死ぬ気で主張しあった個性だけだ。不揃いなピースはお互いを削り取りながら…

カンフーボーイ/Kung Fu Boy

力が欲しいと思ったのは当然の帰結だったように思う。正しさをすり減らすような毎日に嫌気がさして、組織から遠ざかろうとしたけれど、そう簡単に許されるはずもなかったから、誰にも言わずに地下街でカンフー師匠のもとについた。 「力は流動している。逆ら…

Sea and The Darkness

これ以上先へはいけない、と思ったことが一度もなかった中学時代のことを、決して恥ずかしいとは思わないけれど、前に進んでいると思っていたあの頃のことを、少し照れたようになりながら、楽しかったと思い出すことがある。 前に進んでいる人々は、こうして…

ウェンズディ/Wednesday

水曜日の夜になると、君が体育館裏で猫を殺しているのを、僕だけが知っていた。 授業中は髪をいじくっているばかりで、白か黒か紺色の衣服を、まるで自分のものみたいに着こなしながら、君が笑って先生と話す姿を、遠いものとして認めていた。 「一緒に帰ろ…

線路沿い

今日街で会った22歳の占い師は随分と親身になってくれた。 誰かと歩いているときは何故だかいつも、何処へだって行けそうな気がするし、夜の中でだって、白い線の内側を歩いているように思えてしまうんだ。 「そろそろ、本当に頑張らなくちゃね」と彼女は僕…

飯倉さんの髪型

今週のお題「髪型」 返ってきた英単語のテストは相も変わらず決して良くはなかったけれど、安西は不思議といい気分だった。その日は5月にしては珍しく晴れやかな天気だったし、何か普段はするはずのないこともできてしまいそうな気がして、安西は少し早足で…

J.D.サリンジャーの無風状態

真面目になる必要があるよ、なんてすんごい人が僕に言うんだ。 今しかできないんだぞって、せっかく学生なんだからって言うんだ。 ポケットに忍ばせた洋書は半分は格好付けのためのものだけれど、ぼうっと眺めていると時折浮かび上がる意味の子島にしがみつ…

Franny's Note

隅に咲いていた真っ白の花が蝶になる様を、私だけが認めている。 それは片方のまぶたの上に、大切な秘密を探るようにとまった。 「夢を見ているらしいね」 もしかしたらどこかで、私の体は知らない誰かのものになっているのかも 蛇口をひねると透明が勢い良…

あの街の演奏会

寝る前にふと思い立って、机に積み上がる紙類を漁ると、直ぐにお目当てのものは見つかった。 「やっぱり今日みたいだ。どうも眠くならないし、いってみようか」独り言。一家は寝静まっていて、多分外からは、僕の部屋の窓だけが灯台みたいに見えていることだ…

帰り道

四季が巡ると共に、同じ様な所をまた歩いている気がするのは何故だろう。 僕らは季節に感情を乗っ取られていて、考えごとは循環するようにシーズン毎に舞い戻り、懲りもせずにまた答えの出ない問いに悩んでしまうらしい。 成長したなんて台詞は便利な嘘で、…

低気圧ロックン・ロール

朝。低気圧。いつもより少しだけ早く出て学校でグランドピアノを触ろうって算段が裏目に出たのかなんなのか混んでる総武線に嫌気嫌気嫌気max、なんでこうこんなに朝早く出勤すんだこの野郎って感じで日本社会に敵対心丸出しのギンギラギンの目付きでさりげな…

Nuit d'etoiles

後から振り返れば特に思い出すこともないような、後から思えばさして重要でもないような毎日に今日もまた揺られながら、陰鬱の豊かな春を過ごしている。 僕たちが今見ている星の光は実はかなり昔のもので、今現在はもしかしたら、その星は無くなっているかも…

昨日も今日もいわゆる新入生歓迎会というやつで、昨日なんかは幹事というやつだったからやっぱり新入生入学おめでとうみたいな気持ちを持ってはいたのだけれどお酒の力みたいのを借りて結構無鉄砲に楽しくなったりなんかして、午後11時過ぎに嵐の上野公園を…

防波堤

今夜決めよう、と彼女は言った。その提案は少しばかり唐突にも感じられたけれど、「うん。」と、なんのことはないように返したりして。 その言葉は僕だけを置いていく。もう、ずっと決めなくていいじゃないかと、そんな風に思う一方で、やっぱり君が待ってく…