6割くらいほんとうの日記

久しぶりに両手ばなしに挑戦する。わりとうまくいく。よどみが清められ終わったみたいな、空気が気持ちよくて何度も手をはなす。息をすれば数メートル先まで吸い込めるようで、じゃあだから、すごい速さで走り抜けたらすんごいことになるゾと思って勢い立ち…

白、あい色、ピンク、橙

寝ぼけた両眼はネオンをぼんやりと映す。白、あい色、ピンク、橙、丸くてふんわりとした明かり。とにかく掴まっていよう。そうすれば落ちることはない。 色んな種類のお酒をのんだ、のんだ。宝石館に行ったみたい、キラキラと輝くおいしいお店、沢山のキラキ…

Mexico's sunset

「いいか、全部"ゲーム"なのさ。ここにいい例がある。巨大隕石の話だ」 これはヤツがまだ息をしていて、逆に俺なんかはまだ、学習なんてものが価値を持っていると心ん何処かで思っちまってた頃の話だ。 「巨大隕石はあと1日で地球に落下して世界を滅ぼす。…

薄黄色のスカートとにじみ出る灰色

足先に少しの力を入れて、飯倉さんはふわっととびました。春先だからと思いきった、薄黄色の短スカートが内側に空気をふくんで、まあるくひろがって、まるでクラゲみたいに舞いました。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と飯倉さんは笑って、帰り路を丁寧にな…

春のよるはねむる前に

ねむろう、と思ったら、まず、わすれないように歯みがきをする。 しないで布団にはいってみても、きまり悪くてけっきょく歯みがきをしてしまう、 そんな自分を知っているので、うごきたくなさに逆らう。 ついでに固形せっけんを泡だてて顔を丁寧に洗う。タオ…

高揚を誘う景色が

8月だって涼しい、湿気のない海の向こうの国から彼女の絵葉書が届いた。彼女も僕も東京育ちで、それだのに、数年が経ったら彼女はこの街を飛び出して空の向こう、気持ちいいくらいの微笑みだけ残して行ってしまった。僕はなんだか時間にだまされているような…

私にとってのYohei Sugita

今から現代美術家の杉田陽平について書いていこうと思っているのだけれど、しかしながら私は、美術のことをあまりよく知らない。芸術系の大学に通ってはいるものの、専門は美術ではなく、音楽、それも、演奏ではなく、音楽学という学問を扱う学科に所属して…

感傷にやられて

感傷にやられて、孤独になれずにいる 何かを学ばなければと口は急ぐけれど 手は何も動かないまま、昔作った歌を また最初から聴いたりしている。 感情の折り返し地点がわからずに、 再びの始まりの気配もなく ただ、昨日の酒の残りのような 淡い意識に埋もれ…

同年代へ

youtu.be

Guiter solo

君が「この壁の向こうにはきっと、広がっているはずなんだ、なにかが」と呟いた時、どうしようもなく沸き立った胸の内を無視するようにして、「へえ」と冷めたふりをして返してみたりしたけれど、たしかに何かが広がっているんだと思う。見たこともない大き…

medium no.2

新大陸で海を見つけた。薄い紫色をした、美しい海だったから、好奇心と名誉欲で生きてきた大人達が大層な速度で駆け抜けていったんだ。 「ほら、これ、みてごらんよ」興奮した口調でビーカーに入れた薄紫の海を持ち帰る大人。揺らしすぎだよ、僕は笑っていう…

cristal no.23

この花をあげる。 -わたしに? そう。 -どうして? この花をみたら、きみを思いだしたから。 -きれいな花…すぐにこわれてしまいそう 壊さないように、たいせつに持っていて。それで… -それで? それで、壊れてしまったら、それはそれでいいんだ。そのかわり…

ユリイカ

コバルトブルーに染まる中心街を、帰り道橋の上から見下ろして、少しだけ泣く。 思い出した、あの街とは無関係に、わたしの命は回っていた。寂しさはそこにはなくて、むしろ何か、少し清々しいくらいの涙。 整った顔立ちの女性が前から歩いてくる。あの街と…

そらをけとばして

くちぶえを吹いて歩くとすこしつよくなった気がするって、おそわったよ。 一歩でとおくまで、みんなおいてきぼりにするくらいの力強さで、かけていって、そして、ねぇ、もういちど、おはようから始まるような、朝まで、何にも怖いことのない朝まで、たどりつ…

メモメモ地獄大魔境

まだ暗くなりきらない夜道の、あてのない散歩。風に追い越されてばかり。 寂しさと人恋しさとが入り混じって、薄っぺらのペラペーらな自分。道端の人に話しかけて仲良くなって朝まで過ごしたい。そう思った次の瞬間むっつり顔で早足で歩いたり、ペラペーらの…

500マイル。

ここを離れることにしたんだ。 自分が自分でなくなっていくのを、見ていられなくなるといけないとか 後悔するから、とか、そうじゃなくって、もっと素朴な、風のような気持ちの中で決めたんだ。 この街の思い出を何度も数えている。まるで、箱の中に集めたガ…

中央フリーウェイ

徐々に減っていくビルの明かりに合わせて、僕たち三人の盛り上がりも、少しずつ、収まりを見せてきたようだった。 元々は僕とゲンの、悪ふざけみたいな作戦で、それは、後部座席に白のドレスで横になるゆうちゃんの演奏会に向けてのものだった。 都心の高層…

Snorkeling

自分の呼吸する音がやけに大きく聞こえた。色とりどりの魚、ああ、あれは小さい頃図鑑で見た、確か、あれ、なんて名前だったっけ、考える間も無くビュンと泳いで遠ざかる、いろとりどりの魚。 沖に出るにつれて波が高くなる。海底の青、筋となって差し込む太…

飯倉さんおやすみなさい

いろんなことが上手くいかなくて、飯倉さんは、こんなことを思いました。わたしがわたしに置いてきぼりにされているみたいなんだか回りくどい言いまわし。ちょっと格好よさすぎる言葉かもしれない。飯倉さんは人差し指と親指で前髪をなおします。でもほんと…

11/23 祝日 メモ

嫌いな自分になっているときだけ無神経に自分を肯定したりして、数日後には白と白に挟まれてひっくり返って裏がわになってた部分があらわになるのもなんとなく分かるし、身動きなんてとれやしないんよ。 小説家でもないのに書きたかった物語があったりして、…

白くて馴染まない:押上

少し傾いているように見える、白い塔を見上げる。喫煙所で休憩している僕たちの前に東京スカイツリーは悠然と佇んでいた。押上駅から階段をビル4階ほどの高さまで登り、塔のふもとにようやっとたどり着いた頃、あたりには夕方が始まろうとしており、点々と浮…

白くて馴染まない:喫煙所

「11月は、ドイツでは、寂しい月なんです」60歳前後の男性教授はドイツの祝日を説明しながらそんなことを呟く。難しい言葉を使って繰り広げられる講義の大部分はうまく頭に入ってこなくて、とりあえずホワイトボードに書かれたキーワードたちをプリントの端…

白くて馴染まない:総武線、上野公園

市ヶ谷駅を過ぎたあたりだっただろうか、いつも背後に伸びている影みたく、「忘れていただけでいつもそこにあったのだ」と言わんばかりに、夢の中の彼女が姿を現した。 「ねえ、外国に行きたいって、前に言ってたじゃない?」彼女は夢と同じ服装のまま、僕の…

白くて馴染まない:小田急バス

僕はその日バスに揺られながら、夢のことを考えていた。自分が将来に向けて持っている夢、のことではなくて、つい昨日の眠りの中でみた、夢のことをである。 ……その夢の中で僕は、知らない女性と手をつないで歩いていた。人の気配のない一本の長い道を、ゆっ…

僕とはちがう私のかたち:そしてまた、朝

台所でちろちろと落ちる水をグラスへと汲んで、ベランダに出て外を眺めていると、車の少ない大通りと、布団の干してある斜向かいの家が見えます。活動的な両親は風邪気味のわたしをおいて何処かの街へ行ってしまいました。風で揺れるカーテンだけが部屋の中…

僕とはちがう私のかたち:深く黒い海(下)

”見える?” 姿の見えないその存在は、まず、そう尋ねました。あたりを取り巻いていたぎょろりとした目の魚たちは、そこにある何か触れてはならないものに畏怖しているかのように、僕の周囲から遠のき、静かにしています。目の前には、ただ、テトラポッドの上…

僕とはちがう私のかたち:深く黒い海(上)

そう、テトラポッドに登ったその日、僕はバランスをとることも忘れて、ぼちゃんと、海に落ちたのです。なんだか突飛なことのように聞こえるかもしれないですけれど、今から思うと、その日の僕にとっては、それはどちらかといえば、起こるべくして起こってし…

僕とはちがう私のかたち:テトラポッド

その日、僕はテトラポッドの上に立っていました。それは小粒のブドウみたいな紫色をした夕暮れ時で、僕はつま先のあたりでうまくバランスを取りながら、少しばかり肌寒い風に当たっていました。むしゃくしゃしている気持ちを、落ち着けられたらと思ってのこ…

僕とはちがう私のかたち:朝

本来動いているものから、すっかり離れてしまった自分を、ひそひそ合わせていくような、ゆったりとした時間が流れる、まるで夕方の散歩みたいな日曜日です。 今までとは全く違うものをエンジンにしなければ、何も始められない、と感じます。それはもしかした…

「そとがわ」の産毛に手を掠めている

彼女は余白を信じている。屹立する木々の間、木漏れ日を小麦色の頰に受けて時期を伺いながら。我々はそれを、少し卑しげに認めている。 夜明け時、小鳥や栗鼠などの小動物がなにやら慌ただしく辺りへ四散していく。広がるのは茫漠とした不安。対して彼女は新…