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L'après-midi d'un faune

タルイのブログです

帰り道

四季が巡ると共に、同じ様な所をまた歩いている気がするのは何故だろう。 僕らは季節に感情を乗っ取られていて、考えごとは循環するようにシーズン毎に舞い戻り、懲りもせずにまた答えの出ない問いに悩んでしまうらしい。 成長したなんて台詞は便利な嘘で、…

低気圧ロックン・ロール

朝。低気圧。いつもより少しだけ早く出て学校でグランドピアノを触ろうって算段が裏目に出たのかなんなのか混んでる総武線に嫌気嫌気嫌気max、なんでこうこんなに朝早く出勤すんだこの野郎って感じで日本社会に敵対心丸出しのギンギラギンの目付きでさりげな…

Nuit d'etoiles

後から振り返れば特に思い出すこともないような、後から思えばさして重要でもないような毎日に今日もまた揺られながら、陰鬱の豊かな春を過ごしている。 僕たちが今見ている星の光は実はかなり昔のもので、今現在はもしかしたら、その星は無くなっているかも…

昨日も今日もいわゆる新入生歓迎会というやつで、昨日なんかは幹事というやつだったからやっぱり新入生入学おめでとうみたいな気持ちを持ってはいたのだけれどお酒の力みたいのを借りて結構無鉄砲に楽しくなったりなんかして、午後11時過ぎに嵐の上野公園を…

防波堤

今夜決めよう、と彼女は言った。その提案は少しばかり唐突にも感じられたけれど、「うん。」と、なんのことはないように返したりして。 その言葉は僕だけを置いていく。もう、ずっと決めなくていいじゃないかと、そんな風に思う一方で、やっぱり君が待ってく…

憂鬱とおしゃべり3

体が全然上手く働かない。センシティブな部分まで降りていくための集中力がなくなってしまって、代わりによく分からない憂鬱が押し寄せる。そんな日が時折くるし、みんながそれをスランプと呼んでいるのはわかっている。今日もまた同じように暮れていって、…

ナイショのはなし

「好きな異性を教えてくれ」 「いきなりなんですか気持ち悪い」 「いいから」 「よくありません消えてください」 「しかしながら現れる。」 「うざ」 「まあそう怒らずに」 「怒ってません冷静です。ところでところでニカイドウさん、異性の選び方は性格か顔…

演奏会の帰り

今日はつかれてしまってなにも思うように文が書けないけれど、後輩が隣で小生に必死でなにか話してくれようとしているし、小生はこう、どうにかして今日もまた、更新したいなと思って、書いている次第である。 後輩は最近、成城石井で女の子と二個入りのパン…

歩道橋

身の丈に合っていないリュックサックを大きく揺らしながら、他愛もない話を、どんな夜だって笑えるような話を、誰も傷つけないように、楽しそうに紡いでいるその姿にいつも、僕ばっかりが置いていかれるような気持ちになった。 夏帆は多分生まれた時から不幸…

葉月さんとボク 1

葉月さんが水族館に連れて行ってくれたのは、もう7年くらい前のことになる。ボクはその頃まだ小学四年生で、新しく始まった理科の授業のことなんかを自慢げに話していたような気がする。葉月さんは確かもう大学生になっていて、ボクのことをよくどこかへ連れ…

ネーム

最近知った話だが、自分の名前を忘れる奴が案外いるらしい。「僕の名前って、なんだっけ」なんて、物語中盤で大きな事件の後記憶喪失した主人公だけが言えるフレーズなのかと思っていたけれど、どうやらそんなことでもないようで、例えば隣のクラスの杉本な…

コウモリかモグラ

朝になると危ないから外に出ないほうがいい、とパパは言った。 子供ながらに他の誰かと遊べないことを変に思ったけれど、とても逆らう気なんて起こらなかった。 言ってしまえばどんなこともどうでいいように思えたし、よくよく考えれば、友達に価値があると…

本の話1

昨年取っていた講義の先生が、集英社文庫から『ポケットマスターピース』というシリーズが出たと知らせてくれた。トルストイやルイス・キャロル、カフカやディケンズなど古典的な小説家たちの名作が文庫で読める、とのことで、先生も少し関わったという。 大…

露草

透明な風の通った場所が柔らかな風景を残しているように、僕らの歩いてきた道にもきっと、穏やかで特別な感慨が柔らかく残っていて、それを手放したくないからずっと、「散歩をしよう」と、誰かをどこか海辺の街へと誘っている。 少しずつ移り変わっていく景…

荒北君1

荒北君は基本的に、クラスの人たちのことが全く好きではありませんでした。 特に嫌いなのが、集団でつるんでいる男子と声の高い女子でした。つるんでいる男子は、荒北君には、誰も彼も1人の人間であることを放棄しているように見えるのです。 お前ら、元気そ…

憂鬱とおしゃべり2

ブランコが程よく揺れて景色が宙に浮くと、知っている街の景色の中に一瞬間、記憶の中にあった特別大切な感慨が現れる。 それはどこかに通じている気がするし、そのどこかへ行きたいと常に思う。 学校が今日から始まるとか思っていて、それは確かに一般論と…

憂鬱とおしゃべり 1

自然と人工の二項対立は作りやすいけれど、例えば自然が持っている「世界の秘密」みたいなものがあるとして、それが全ての事柄を然るべきかたちで動かしているとしたら、人工的に作られたものも全て「世界の秘密」による然るべき理であるわけだから、「人間…

少年B

目を瞑ると見えてくるきらきらとした光は、星のものなのか、ホタルのものなのか、精霊のものなのかわからないけれど、まだそこにあって暖かく光っている 言葉は一番低級な表現かもしれないね。何かを名付けてしまうことも、こうして文字を打つことも、人間の…

少年A

透明な窓に大きく花を描いて、うちの中に庭をつくる。自分が小さくなった気がして、自分だけの場所ができたきがして、なんとなく嬉しい。 離れていく向こう側の感覚から離れたくないから、守るように絵を描いて、また自分だけの世界を作って満足してはすぐ不…

エイプリルフールだからややこしいんだけど

髪を銀にしようと思った、初っ端からおかしい奴と見られたかった、学校中の知り合いに絶対しない方が良かったって言われてみたかった。とか思ってたら美容院に止められた。お金がかかるし面倒だし髪が痛むらしい。そりゃそうだった、でもたしかに言われてみ…

僕だけのSunnyで

好きな小説はどっさりと積んだ。CDもとびっきりのを揃えた。少し奮発したウイスキーの小瓶と、どうしてもまだ離れられないジンジャエールと、昔の恋人が描いてくれた肖像画は後部座席に積んである。 サニー。庭の隅で忘れられていたオンボロの車は、ありとあ…

博士とロボットの話

おじいちゃんが一人分のお皿を持ってくる。ミートパイの香りが鼻の先を敏感にさせた。昼にとった子ジカだ。子ジカはミートパイが一番、らしい! ミートパイに手を付ける前に、僕の背中を開けたおじいちゃんはゆっくりと、液体を中へ入れていく。 身体中の歯…

手書きメモ7

彼女はぼうっと空を見ていた。透き通っていて、どこまでも広く、涼しい空。そこには彼女の絵の具で作られた水色がさらさらと載せられていて、僕はその中にすっぽりとくるまる。 胸に溢れそうな「らぶ」を伝えようとしても、ノーフィルターの感情は少し相手に…

キュンってきちゃう言葉しりとり

「しりとりの「り」からね」 「オケイ。超妄想型溌剌系女子高生に任しておいて。「り」ね。『理解できないほど慕っている』」 「普通にキモいのきたな」 「ちっ、ちっ、ちっ。甘いね。「逆に」だよ「逆に」。逆に私なら即落ちるね」 「あー「逆に」ね。おけ…

飯倉さん

飯倉さんは買い物をしている。昨日テレビで春物の野菜の見分け方をやっていたものだから、飯倉さんは得意気にキャベツを手にとってあれやこれやと吟味する。しかし正直なところ、軽い方が美味しいのか重い方が美味しいのか忘れてしまっていた飯倉さんは、と…

中央線快速

高いビルがどんどん小さくなっていく ぐんぐんと遠くなる 次の駅に近づいてみんな降りる準備をする。 でも、一人だけぐんぐんと遠くなるビルを見ている そんな誰かを「何かに浸っている」とか言って 見苦しいと思うのは、はしたない。 言葉遣いの悪い人ばか…

Here Comes The Sun and I Say 12(終)

第12章 深浦:それならそれで、もういい。 夜に四肢が溶けていく気がした。何もかもに忘れられて、この世界の中で、一つの個性を持たない構成物質として融解していくような気がした。それは案外心地が良くて、私は少年の「君が人間的な生物でいたいのなら」…

Here Comes The Sun and I Say 11

第11章 京谷:君の顔が好きだ 全ての赤信号にひっかかり、工事現場に3度ぶつかり、その度に迂回して迷い込んだ知らない道で方向を間違える。悉く何かの強制力が働いていて、目的地に着くのを拒んでいた。少女はずっと小さな寝息を立てて眠っていて、彼女さえ…

Here Comes The Sun and I Say 10

第10章 深浦:長い長い夜が来る 自転車を引く陣野くんの後ろに、はぐれないように付いていく。「げんきー?」と能天気に聞く彼の顔に映る、昔と少しも変わらない純粋な活力は眩しく私の姿を照らす。 「学校?めちゃくちゃ楽しいよ」彼の声は常に何らかの芯を…

Here Comes The Sun and I Say 9

第9章 京谷:巨大な力にさらわれないように 深浦さんのことを思うと、今まで気にしてこなかった沢山のことが思い出されてきた。耳元にある少し大きめのホクロとか、考え事をしている時にシャーペンをトントンとする癖だとか、そんな所を自分が見ていたことが…

Here Comes The Sun and I Say 8

第8章 深浦:翼を生やして飛んで行ってしまうのだろう 存在そのものが飲み込まれるような、そんな夜が来た。家中の漫画を枕元に置いて、眠気が私を捉えるまで、根気強く、展開の早い物語に重い体を没入させる。 ヴァイオリンの上手い人なんて本当に数え切れ…

Here Comes The Sun and I Say 7

第7章 京谷:そうすれば少なくとも 終わりのチャイムが鳴った。今日も放課後の予定は全くなく、同じようなホーム・ルームが機械的に進行し、そして結局、深浦さんは今日も学校に来なかった。帰路に向かいながらぼんやりと空を見る。空の流動に身を任せている…

Here Comes The Sun and I Say 6

第6章 深浦:深海の中でうずくまるみたいに 練習は思っていた以上に捗らない。というより、弾いていることに全くと言っていいほどの充実を感じられない。言いようのない空虚さが身を包んで離さなかった。 果たしてヴァイオリンをすることにどれだけの価値が…

Here Comes The Sun and I Say 5

第5章 京谷:「いてくれたらいいな」という、その程度のもので 雪解けを告げるような朝日が差し込む。よく冷えた学校までの道のりは、未だ溶けきっていない脳みそを使って仮初めの「今日も1日頑張ろう」を作るための時間で、学校についてしまえばいつも「今…

Here Comes The Sun and I Say 4

第4章 深浦:生理的な嫌悪感が止めどなく広がっていく 私の中学校はさして頭のいいところではなかったから、普通にしていれば、成績はいつも上位だった。普通にしていれば、と言ったけれど、その頃の私(今もだけれど)の「普通」が周りの人よりありていに言…

Here Comes The Sun and I Say 3

第3章 京谷:まだはっきりとした自己肯定を味わう 読書を終えるとしばらくの間、書き手の語り癖が頭から離れずに、頭の中で繰り広げられる考え事の全てが、その本の語り口調と似通ってしまうことがある。まるで一度意識した呼吸を気づかぬ間にまた意識しなく…

Here Comes The Sun and I Say 2

第2章 深浦:「自分にはヴァイオリンしかない」とまでいうつもりはないけれど 昨晩の出来事が未だじめじめと全身を侵食し続けていて、練習には全くと言っていいほど身が入らなかった。何をどうしようと、何を弾こうと、その先には本当に何もないんじゃないか…

Here Comes The Sun and I Say 1

第1章 京谷:家に帰るにはいつも橋を渡る必要があった …どこへでもいけるような気がしていた。知らない名前の駅を降りて、見たこともない街まで。ずっとぼんやりと描いていた自由が其処にはあって、様々な秩序を超えたその場所で、自由気ままに歩く。そんな…

そういえばちょうど満月

行動と思索の全てが欲望と名付けられてしまう日が怖い。 特定の誰かに好きという感情を向けることも、何かの役に立とうと思うことも、人を信じることも、ただの欲望になってしまって、誰かに疎まれるのが怖い。誰かに一線を引かれるのが怖いし、誰かの邪魔を…

さんがつのじゅうににち

誰も彼もがどうでも良くなった途端に頑張る理由を失う。自分を守るための「頑張る」を、いつからかどこかに捨てている。 ぬくもりに近い何かが遠ざける世界中の「あなた」との距離は、やもすると届かなくなりそうで 履きなれたスニーカーでぼんやりと歩く 雲…

その先の角を曲がって

さち子は毎日改札口隣の鳥居をくぐる。なんでも神様が祀られているらしい。さち子はぼうっとその場に立ちすくむと目を閉じて大きく息をする。僕はそれを外から見ることもなくみている。まるでこの駅は面白いものばかりでとても君には構っていられないよとで…

村上春樹とクラシック音楽

村上春樹の小説には必ずと言っていいほどクラシック音楽が登場する。そして多くの人は少なからずそこで流れる音楽に興味を持つ。『1Q84』を読んでヤナーチェクの「シンフォニエッタ」をyoutubeで検索する人もいれば、『騎士団長殺し』を読んでリヒャルトのオ…

古本屋

古本屋で抱えきれないほどの本を買ったので懲りもせず未読本が増えた。もう未読本が既読本より遥かに多くなって久しい。人は笑う。僕も笑う。けれどこう、うまく言えないけれど、循環する欲望に瞬時に応えられるような本棚を、できる限り、用意しておきたい。…

又吉直樹『劇場』

自明のことかもしれないが、又吉直樹は物語作家ではない。何故なら思考言語と小説言語の「次元のずれ」が余りにもないからだ。 又吉さんといえば何と言っても『火花』だ。『火花』は主人公が師匠と呼べる先輩芸人と出会い、彼の「伝記」を書きながら触発され…

九井諒子『竜の学校は山の上』

九井諒子という漫画家がいる。彼女の漫画には大きな特徴がある。どの作品も「ファンタジーの新たな視座を模索する」というコンセプトを持っているのだ。羽が生えた天使が学校に通って進路に悩んだり(東京は電線が多くて飛びにくいので留学を考える)、人魚…

向こう側の街

この街に移り住んで半年が経った。 生活には少しずつだけれど慣れてきている。時計塔のことも、魔法の唐揚げが揚がる時間帯のことも、学校のことも、少しずつだけれど、分かってきた。 今日最初の伸びをして、布団からゆっくりと足を下ろし洗面台へ向かう。…

アパート

感情が心から生まれるとしたら、心は一つのアパートみたいなものだと思う。こうなりたいという願いや、どうしても堪えられない欲望や、悪癖など、それらは心の中でアパートの住人となって、各々の部屋で過ごしているのだ。この感情は301号室、この感情は203…

ゆっくりとおやすみをとなえる

僕の世界で見ている「赤」と、他の誰かが見ている「赤」が違う色かもしれない。子供の頃に、そう考えたことがあった。 でもすぐに気がついた。それを証明する手段などないのだ。例えば僕にとっての「赤」が誰かの目には「青」に見えているとして、その違いを…

「君の名は」について

チャゲ&アスカで言うところのアスカの方が再逮捕されかけた話をアスカさんが釈放されてから知った世間離れした僕でも「君の名は」はみた。一度とならず二度見た。新海誠さんのことが前々から好きだった。100円で買った漫画版「ほしのこえ」を皮切りに、「秒…

セーラー服とフランスパン

最近、昼食が必要になると、実家から駅へ向かう途中にあるパン屋さんで買うようにしている。明太子を中に塗ったフランスパンがとても美味しいのだ。こんがりと焼け上がったフランスパンを一口かじると、ふんわりとしたパン生地の隙間から溶けたマーガリンと…