読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

できるだけ真っ直ぐなうそ

タルイのブログです

エターナルシュレッダー中のメモ

愛の教科書がもしあったら、きっと中身を冷めた笑いでパラパラ見ながら、結局は破いて捨てる気がするけれど、それでも「これが恋だ」とか、「それが愛だよ」とか、そんな風に、自分の気持ちを整理したくなる人はたくさんいるだろうから、やっぱりどこかで、…

できるだけ真っ直ぐなうそ

例えば君とどこまでも遠くまで歩いて行けるとして 僕らのたどり着く街が、ずっと昔から願っている 優しさと想像力に満ちた場所だとしたら そしたらいっそ、僕らはその場所からはぐれるようにして またこの場所に戻ってくるのかもしれないし もしかしたらずっ…

Sea and The Darkness Ⅱ

黙ってても生きていける僕らは、何故そうまでして言葉を交わすのだろう 何故文字を書くのだろう。音を鳴らし、絵を描き、体を揺らすのだろう 義務でもないのに、何かを伝えようとするのはなぜだろう どうしようもなく不揃いな僕たちは、闇の中で形を溶かす …

嵐のあとで/Aftermath

「ばいばい」「ばいばい」遠くなった君が振り返らずに帰っていく様を、僕は今でも、鮮明にとは言えないけれど、印象深く思い出すことができる。 夏はいつの間にかもう、すぐ近くにあるらしい。やがて梅雨が訪れて、それが去ってゆけば、あの日みたいな夏が来…

日曜/Her Surprise

人一倍頑張ろうとする君のことを僕はよくしっているつもりで、そんな風に生きている君のことを、美しいだとか、偉いとか、誇りに思うだとか、たくさん褒める大人の人や同級生たちの存在を知ってもいる。彼らの期待になんとかして答えようとすることも、人に…

燃える森と氷河/Defferent Kinds

深く沈んだ夜の中で、変な夢が終わるのを当てもなく待っていた。君もちゃんとそこにいる。青い目と金色の髪と、不機嫌そうな唇の端。 誰にも言えないでいた湖の奥にあるぼくだけの隠れ家で、過ぎていく四季を過ごしながら、君と何人か子供を作った。男の子も…

鳥と鳥/Bird Cage

三番通りの坂を自転車で下りながら、彼女は毎日のように笑っていた。 あの頃の彼らには怖いものなど何もなくて、代わりにあったのは、世界を覆すような秘密と、戦いだらけの毎日と、死ぬ気で主張しあった個性だけだ。不揃いなピースはお互いを削り取りながら…

カンフーボーイ/Kung Fu Boy

力が欲しいと思ったのは当然の帰結だったように思う。正しさをすり減らすような毎日に嫌気がさして、組織から遠ざかろうとしたけれど、そう簡単に許されるはずもなかったから、誰にも言わずに地下街でカンフー師匠のもとについた。 「力は流動している。逆ら…

Sea and The Darkness

これ以上先へはいけない、と思ったことが一度もなかった中学時代のことを、決して恥ずかしいとは思わないけれど、前に進んでいると思っていたあの頃のことを、少し照れたようになりながら、楽しかったと思い出すことがある。 前に進んでいる人々は、こうして…

ウェンズディ/Wednesday

水曜日の夜になると、君が体育館裏で猫を殺しているのを、僕だけが知っていた。 授業中は髪をいじくっているばかりで、白か黒か紺色の衣服を、まるで自分のものみたいに着こなしながら、君が笑って先生と話す姿を、遠いものとして認めていた。 「一緒に帰ろ…

線路沿い

今日街で会った22歳の占い師は随分と親身になってくれた。 誰かと歩いているときは何故だかいつも、何処へだって行けそうな気がするし、夜の中でだって、白い線の内側を歩いているように思えてしまうんだ。 「そろそろ、本当に頑張らなくちゃね」と彼女は僕…

飯倉さんの髪型

今週のお題「髪型」 返ってきた英単語のテストは相も変わらず決して良くはなかったけれど、安西は不思議といい気分だった。その日は5月にしては珍しく晴れやかな天気だったし、何か普段はするはずのないこともできてしまいそうな気がして、安西は少し早足で…

J.D.サリンジャーの無風状態

真面目になる必要があるよ、なんてすんごい人が僕に言うんだ。 今しかできないんだぞって、せっかく学生なんだからって言うんだ。 ポケットに忍ばせた洋書は半分は格好付けのためのものだけれど、ぼうっと眺めていると時折浮かび上がる意味の子島にしがみつ…

Franny's Note

隅に咲いていた真っ白の花が蝶になる様を、私だけが認めている。 それは片方のまぶたの上に、大切な秘密を探るようにとまった。 「夢を見ているらしいね」 もしかしたらどこかで、私の体は知らない誰かのものになっているのかも 蛇口をひねると透明が勢い良…

あの街の演奏会

寝る前にふと思い立って、机に積み上がる紙類を漁ると、直ぐにお目当てのものは見つかった。 「やっぱり今日みたいだ。どうも眠くならないし、いってみようか」独り言。一家は寝静まっていて、多分外からは、僕の部屋の窓だけが灯台みたいに見えていることだ…

帰り道

四季が巡ると共に、同じ様な所をまた歩いている気がするのは何故だろう。 僕らは季節に感情を乗っ取られていて、考えごとは循環するようにシーズン毎に舞い戻り、懲りもせずにまた答えの出ない問いに悩んでしまうらしい。 成長したなんて台詞は便利な嘘で、…

低気圧ロックン・ロール

朝。低気圧。いつもより少しだけ早く出て学校でグランドピアノを触ろうって算段が裏目に出たのかなんなのか混んでる総武線に嫌気嫌気嫌気max、なんでこうこんなに朝早く出勤すんだこの野郎って感じで日本社会に敵対心丸出しのギンギラギンの目付きでさりげな…

Nuit d'etoiles

後から振り返れば特に思い出すこともないような、後から思えばさして重要でもないような毎日に今日もまた揺られながら、陰鬱の豊かな春を過ごしている。 僕たちが今見ている星の光は実はかなり昔のもので、今現在はもしかしたら、その星は無くなっているかも…

昨日も今日もいわゆる新入生歓迎会というやつで、昨日なんかは幹事というやつだったからやっぱり新入生入学おめでとうみたいな気持ちを持ってはいたのだけれどお酒の力みたいのを借りて結構無鉄砲に楽しくなったりなんかして、午後11時過ぎに嵐の上野公園を…

防波堤

今夜決めよう、と彼女は言った。その提案は少しばかり唐突にも感じられたけれど、「うん。」と、なんのことはないように返したりして。 その言葉は僕だけを置いていく。もう、ずっと決めなくていいじゃないかと、そんな風に思う一方で、やっぱり君が待ってく…

憂鬱とおしゃべり3

体が全然上手く働かない。センシティブな部分まで降りていくための集中力がなくなってしまって、代わりによく分からない憂鬱が押し寄せる。そんな日が時折くるし、みんながそれをスランプと呼んでいるのはわかっている。今日もまた同じように暮れていって、…

ナイショのはなし

「好きな異性を教えてくれ」 「いきなりなんですか気持ち悪い」 「いいから」 「よくありません消えてください」 「しかしながら現れる。」 「うざ」 「まあそう怒らずに」 「怒ってません冷静です。ところでところでニカイドウさん、異性の選び方は性格か顔…

演奏会の帰り

今日はつかれてしまってなにも思うように文が書けないけれど、後輩が隣で小生に必死でなにか話してくれようとしているし、小生はこう、どうにかして今日もまた、更新したいなと思って、書いている次第である。 後輩は最近、成城石井で女の子と二個入りのパン…

歩道橋

身の丈に合っていないリュックサックを大きく揺らしながら、他愛もない話を、どんな夜だって笑えるような話を、誰も傷つけないように、楽しそうに紡いでいるその姿にいつも、僕ばっかりが置いていかれるような気持ちになった。 夏帆は多分生まれた時から不幸…

葉月さんとボク 1

葉月さんが水族館に連れて行ってくれたのは、もう7年くらい前のことになる。ボクはその頃まだ小学四年生で、新しく始まった理科の授業のことなんかを自慢げに話していたような気がする。葉月さんは確かもう大学生になっていて、ボクのことをよくどこかへ連れ…

ネーム

最近知った話だが、自分の名前を忘れる奴が案外いるらしい。「僕の名前って、なんだっけ」なんて、物語中盤で大きな事件の後記憶喪失した主人公だけが言えるフレーズなのかと思っていたけれど、どうやらそんなことでもないようで、例えば隣のクラスの杉本な…

コウモリかモグラ

朝になると危ないから外に出ないほうがいい、とパパは言った。 子供ながらに他の誰かと遊べないことを変に思ったけれど、とても逆らう気なんて起こらなかった。 言ってしまえばどんなこともどうでいいように思えたし、よくよく考えれば、友達に価値があると…

本の話1

昨年取っていた講義の先生が、集英社文庫から『ポケットマスターピース』というシリーズが出たと知らせてくれた。トルストイやルイス・キャロル、カフカやディケンズなど古典的な小説家たちの名作が文庫で読める、とのことで、先生も少し関わったという。 大…

露草

透明な風の通った場所が柔らかな風景を残しているように、僕らの歩いてきた道にもきっと、穏やかで特別な感慨が柔らかく残っていて、それを手放したくないからずっと、「散歩をしよう」と、誰かをどこか海辺の街へと誘っている。 少しずつ移り変わっていく景…

荒北君1

荒北君は基本的に、クラスの人たちのことが全く好きではありませんでした。 特に嫌いなのが、集団でつるんでいる男子と声の高い女子でした。つるんでいる男子は、荒北君には、誰も彼も1人の人間であることを放棄しているように見えるのです。 お前ら、元気そ…

憂鬱とおしゃべり2

ブランコが程よく揺れて景色が宙に浮くと、知っている街の景色の中に一瞬間、記憶の中にあった特別大切な感慨が現れる。 それはどこかに通じている気がするし、そのどこかへ行きたいと常に思う。 学校が今日から始まるとか思っていて、それは確かに一般論と…

憂鬱とおしゃべり 1

自然と人工の二項対立は作りやすいけれど、例えば自然が持っている「世界の秘密」みたいなものがあるとして、それが全ての事柄を然るべきかたちで動かしているとしたら、人工的に作られたものも全て「世界の秘密」による然るべき理であるわけだから、「人間…

少年B

目を瞑ると見えてくるきらきらとした光は、星のものなのか、ホタルのものなのか、精霊のものなのかわからないけれど、まだそこにあって暖かく光っている 言葉は一番低級な表現かもしれないね。何かを名付けてしまうことも、こうして文字を打つことも、人間の…

少年A

透明な窓に大きく花を描いて、うちの中に庭をつくる。自分が小さくなった気がして、自分だけの場所ができたきがして、なんとなく嬉しい。 離れていく向こう側の感覚から離れたくないから、守るように絵を描いて、また自分だけの世界を作って満足してはすぐ不…

エイプリルフールだからややこしいんだけど

髪を銀にしようと思った、初っ端からおかしい奴と見られたかった、学校中の知り合いに絶対しない方が良かったって言われてみたかった。とか思ってたら美容院に止められた。お金がかかるし面倒だし髪が痛むらしい。そりゃそうだった、でもたしかに言われてみ…

僕だけのSunnyで

好きな小説はどっさりと積んだ。CDもとびっきりのを揃えた。少し奮発したウイスキーの小瓶と、どうしてもまだ離れられないジンジャエールと、昔の恋人が描いてくれた肖像画は後部座席に積んである。 サニー。庭の隅で忘れられていたオンボロの車は、ありとあ…

博士とロボットの話

おじいちゃんが一人分のお皿を持ってくる。ミートパイの香りが鼻の先を敏感にさせた。昼にとった子ジカだ。子ジカはミートパイが一番、らしい! ミートパイに手を付ける前に、僕の背中を開けたおじいちゃんはゆっくりと、液体を中へ入れていく。 身体中の歯…

手書きメモ7

彼女はぼうっと空を見ていた。透き通っていて、どこまでも広く、涼しい空。そこには彼女の絵の具で作られた水色がさらさらと載せられていて、僕はその中にすっぽりとくるまる。 胸に溢れそうな「らぶ」を伝えようとしても、ノーフィルターの感情は少し相手に…

キュンってきちゃう言葉しりとり

「しりとりの「り」からね」 「オケイ。超妄想型溌剌系女子高生に任しておいて。「り」ね。『理解できないほど慕っている』」 「普通にキモいのきたな」 「ちっ、ちっ、ちっ。甘いね。「逆に」だよ「逆に」。逆に私なら即落ちるね」 「あー「逆に」ね。おけ…

飯倉さん

飯倉さんは買い物をしている。昨日テレビで春物の野菜の見分け方をやっていたものだから、飯倉さんは得意気にキャベツを手にとってあれやこれやと吟味する。しかし正直なところ、軽い方が美味しいのか重い方が美味しいのか忘れてしまっていた飯倉さんは、と…

中央線快速

高いビルがどんどん小さくなっていく ぐんぐんと遠くなる 次の駅に近づいてみんな降りる準備をする。 でも、一人だけぐんぐんと遠くなるビルを見ている そんな誰かを「何かに浸っている」とか言って 見苦しいと思うのは、はしたない。 言葉遣いの悪い人ばか…

Here Comes The Sun and I Say 12(終)

第12章 深浦:それならそれで、もういい。 夜に四肢が溶けていく気がした。何もかもに忘れられて、この世界の中で、一つの個性を持たない構成物質として融解していくような気がした。それは案外心地が良くて、私は少年の「君が人間的な生物でいたいのなら」…

Here Comes The Sun and I Say 11

第11章 京谷:君の顔が好きだ 全ての赤信号にひっかかり、工事現場に3度ぶつかり、その度に迂回して迷い込んだ知らない道で方向を間違える。悉く何かの強制力が働いていて、目的地に着くのを拒んでいた。少女はずっと小さな寝息を立てて眠っていて、彼女さえ…

Here Comes The Sun and I Say 10

第10章 深浦:長い長い夜が来る 自転車を引く陣野くんの後ろに、はぐれないように付いていく。「げんきー?」と能天気に聞く彼の顔に映る、昔と少しも変わらない純粋な活力は眩しく私の姿を照らす。 「学校?めちゃくちゃ楽しいよ」彼の声は常に何らかの芯を…

Here Comes The Sun and I Say 9

第9章 京谷:巨大な力にさらわれないように 深浦さんのことを思うと、今まで気にしてこなかった沢山のことが思い出されてきた。耳元にある少し大きめのホクロとか、考え事をしている時にシャーペンをトントンとする癖だとか、そんな所を自分が見ていたことが…

Here Comes The Sun and I Say 8

第8章 深浦:翼を生やして飛んで行ってしまうのだろう 存在そのものが飲み込まれるような、そんな夜が来た。家中の漫画を枕元に置いて、眠気が私を捉えるまで、根気強く、展開の早い物語に重い体を没入させる。 ヴァイオリンの上手い人なんて本当に数え切れ…

Here Comes The Sun and I Say 7

第7章 京谷:そうすれば少なくとも 終わりのチャイムが鳴った。今日も放課後の予定は全くなく、同じようなホーム・ルームが機械的に進行し、そして結局、深浦さんは今日も学校に来なかった。帰路に向かいながらぼんやりと空を見る。空の流動に身を任せている…

Here Comes The Sun and I Say 6

第6章 深浦:深海の中でうずくまるみたいに 練習は思っていた以上に捗らない。というより、弾いていることに全くと言っていいほどの充実を感じられない。言いようのない空虚さが身を包んで離さなかった。 果たしてヴァイオリンをすることにどれだけの価値が…

Here Comes The Sun and I Say 5

第5章 京谷:「いてくれたらいいな」という、その程度のもので 雪解けを告げるような朝日が差し込む。よく冷えた学校までの道のりは、未だ溶けきっていない脳みそを使って仮初めの「今日も1日頑張ろう」を作るための時間で、学校についてしまえばいつも「今…

Here Comes The Sun and I Say 4

第4章 深浦:生理的な嫌悪感が止めどなく広がっていく 私の中学校はさして頭のいいところではなかったから、普通にしていれば、成績はいつも上位だった。普通にしていれば、と言ったけれど、その頃の私(今もだけれど)の「普通」が周りの人よりありていに言…