Tarui2019

Tarui 22歳。 サッカーで距離のあるスルーパスが通った時が好きです。 ◆Youtube→https://www.youtube.com/channel/UCTZzxdmNYpv1vQVdgLcd5YQ?view_as=subscriber ◆Twitter→@Summerch7 ◆Instagram→pingpong788

そらをけとばして

くちぶえを吹いて歩くとすこしつよくなった気がするって、おそわったよ。

一歩でとおくまで、みんなおいてきぼりにするくらいの力強さで、かけていって、そして、ねぇ、もういちど、おはようから始まるような、朝まで、何にも怖いことのない朝まで、たどりつくまで、さ。

ずっと路地を歩いていたら、永遠を「とわ」とよむのに恥ずかしくなくなった。だから僕はくちぶえをやめて走った。バクバクとした心臓はまるで、世界中をゆらす、大きな大きなカミナリみたいだった。

届かなくても、とおくまで走り抜けていきたいんよ。ねぇ、そしたら、さ?ほら。

またね。

メモメモ地獄大魔境

まだ暗くなりきらない夜道の、あてのない散歩。風に追い越されてばかり。

寂しさと人恋しさとが入り混じって、薄っぺらのペラペーらな自分。道端の人に話しかけて仲良くなって朝まで過ごしたい。そう思った次の瞬間むっつり顔で早足で歩いたり、ペラペーらのまま風に追い越され、大きくその度に感情が揺れて。

美味しいお酒を買って帰ろうかな、それも良いけれど、なんだかもう寝てしまいたいな。寝たらきっと夢を見る。のどかな海辺を歩く夢。

最寄駅と違うところに住んだことがない自分がすごく単調に思える。単調で一色でペラペーら、直ぐ書けるよ小学生。人物画の見本にして、つまらなくなって30分で放り投げてちょーだい、いやんそれはそれで傷ついてしまうかも。

なんだか何もうまく機能しないな、感情の域値が際限を忘れているみたい。コンピューターがイかれてるんだ。分厚い胸板はもともと持ってやいないし、かといって筋トレするのもあの子のパクリみたい、構って欲しいとかどうとか、ペラペーらでもせめて、うまく言えたら良いのに。パクってパクって「あんたアタシのこと好きすぎじゃーん」なんて言われてヘラヘラ笑っていたいンゴ。ほんまに、まにまに。

誰かに電話してみようかな、それも嫌になるのが関の山かな、なんて、考えて渦巻いている前に、睡魔が襲ってきて、ただ静かなあの海の夢をみたいや。

500マイル。

ここを離れることにしたんだ。

自分が自分でなくなっていくのを、見ていられなくなるといけないとか

後悔するから、とか、そうじゃなくって、もっと素朴な、風のような気持ちの中で決めたんだ。

この街の思い出を何度も数えている。まるで、箱の中に集めたガラクタの数を確認する子供みたいに。

好きだった音楽を聴いてるよ。君の好きだった音楽を。

頬杖をついて車窓を眺めながら、遠くに消えていく景色を見送りながら、離れた街に残したものを、数えて、数えて、その度に、これで良かったのだと、丁寧に思い直しながら。

 

https://youtu.be/atoBaevHnWA

youtu.be

中央フリーウェイ

徐々に減っていくビルの明かりに合わせて、僕たち三人の盛り上がりも、少しずつ、収まりを見せてきたようだった。

元々は僕とゲンの、悪ふざけみたいな作戦で、それは、後部座席に白のドレスで横になるゆうちゃんの演奏会に向けてのものだった。

都心の高層ビルで行われたその演奏会は、大企業の社長や官僚などの集まるVIPルームで開催され、ゆうちゃんは「未来の日本を支える芸術家」として歌曲を歌うという、ギャラの良い、けれど大変に畏まった仕事内容で、彼女の苦手部類であるのは、容易に想像がついた。

案の定、僕の画面の割れたi phoneには、演奏の始まる少し前に、「垂井あかん、これきついわ」とLINEが届くことになる。その文面のスクリーンショットをすかさずゲンに送ると、5分後に「そうだと思った(笑)」と返事が。僕らは何かサプライズ的に彼女にお疲れ様会を開いたろ、と思い、演奏会の行われているビルまでとりあえず駆けつけることにした。僕は仕事から家へ帰るとリビングでお茶を飲む間も無く車のキーをとった。中古で買った車は小気味良いエンジン音で、ひとまずはゲンの滞在する街をカーナビの目的地に設定。

僕ら二人の計画では、演奏会が終わり、お客との食事会と交流を一通り終え、くたくたになったゆうちゃんが出てくるのをビルの真下で待ってどっかの飲み屋にでもいく、と言う感じだったので、ビルの下について五分もしないうちにゆうちゃんが駆けて来たのには驚いた。「え、あれゆうちゃんじゃない?」ゲンが驚きの混じった声で言う。「え、あほんまや」と僕は慌てて後部座席のロックを解除する。「ふわぁー」ゆうちゃんは乗り込んでくると同時腑抜けた声を出すと、「はよ出して!」と僕を促した。僕は流されるままにハンドルを切る。

 


「いや、もう空気が耐えきれんくて」ヒールを脱いで足を伸ばしたゆうちゃんが一気に喋り出した。

「名刺交換とか始まっちゃって。とりあえずトイレに逃げ込んでタバコすっとったんよ。窓開けて。ほんなら下に垂井の車停まっとるの見えたからさ、抜け出して来たわけ」

「え、じゃあ誰にもいわないで逃げて来ちゃったの?」僕が聞く。

「せやで」ゆうちゃんはかっかと笑っており、「最高」と隣で呟くゲンはもう酔っ払っているみたいだった。

「もう遠くまでいこ」

 


そして1時間ほどがたてば、僕らはどこに向かうかもわからないまま、中央高速自動車道を走っていた。放った首元のネクタイはどこかに行ってしまった。助手席のゲンはわくわくが止まらない様子で、ネオンの中に見えるものを指差してはそれを後部座席のゆうちゃんに教えていた。

「どこ行くんやろ」

「わからんけれどとりあえず走っとるで」

「ええな、とりあえずいこ」

「遠くまでいこ」

車内に流れる音楽は、元はゆうちゃんが好きだったバンドで、気づけば僕ら三人共が好きになっていたものだった。気の向くままに歌って、気の向くままに休んで、「良い曲だな」とか呟きながら、「演奏会、お疲れさま。何歌ったの」なんて、何気ない会話が生まれたりもして、いつもの僕らと同じように、流れの赴くままに時が進んでいく。

ビルの明かりが徐々に消えていき、少し経って、ついに隣県の看板が出て来た時、盛り上がりを見せたのは僕とゲンだけで、その時初めて、ゆうちゃんが寝ているのに気がついた。丸めた毛布を枕がわりにして、横になって目を閉じている。

「疲れてたんだろうね」ゲンが言う。「そりゃそうよね、まあ、夜も普通に遅いしな」

僕たち二人の空間にバンドは何故がうまく合わなくて、ゲンのリクエストしたヴァイオリンの小曲集を聴くことにした。僕らの会話は自然と少なくなり、時折「おぉ」とか、相槌みたいな感想をいうだけになる。

夜明け前、サービスエリアに入ると、ゆっくりと進行する車に違和感を感じたのかゆうちゃんが起き上がった。

「起きた?よう眠ってたね」ゲンが言う。僕はまだ慣れない駐車に必死になって、言葉をかけることが、できない。

ゆうちゃんの白いドレスはあまりにもサービスエリアで目立つから、ゲンが着ていたジャケットを上に羽織る事にした。ゲンはその分寒そうな格好になったが、本人は全然大丈夫そうだ。ゆうちゃんは眠気まなこで「ありがと」とつぶやく。

お腹が空いたので、三人揃ってあったかいうどんを頼んだ。つゆがこぼれないようにお盆に乗ったうどんを丁寧に席まで運ぶ。妙に明るいサービスエリア内。お腹がすいていたので勢いよく食べ進めていると、ゲンが笑っていたから、どうしたんだいと目線を合わせてみれば、口いっぱいにうどんを頬張ってモギュモギュと噛んでいるゆうちゃんがそこにはいて、大層幸せそうで、なんだか、僕もゲンも、平和すぎる一瞬に笑った。

サービスエリアの喫煙所からは遠く僕らが逃げ出して来た街がよく見えた。ここから見ればちっぽけだけれど、ここから見ても輝いている。「i phoneの電源つけよかな」ゆうちゃんが言う。どうやら連絡をみるのが嫌で、電源を落としたままにしていたらしい。

「朝になってからで良いよ」ゲンは言う。僕はすぐにでも確認した方が良いと思うが、まあ、別に良いのか、と、すぐに考え直して、何も言わない。

夜明けを待ち構える世界は静寂に気配を孕んでいる。ゆうちゃんの吸うタールの多い煙草の煙が濃く漂う。その麻薬的な匂いにやられそうになりながら、僕は夜明けを遠ざける。あと少ししたらまた、夜明けから逃げるようにハンドルを回すのだろう。今宵はどこまで逃げ切れるだろう。

どこまでも、と、きっと二人とも言う。けれど確実に夜明けは、静寂に気配を孕んでいるのだ。

それでも、と僕は思う。この二人と一緒なら、きっと。きっとほんとうに、際限はどこまでもないのだ。「うまみちゃんやな」煙草をふかして幸せそうなゆうちゃんがいる。ゲンが笑う。それを見た僕も笑う。

その瞬間、夜明けの気配は明後日の方へ消え去っていく。

Snorkeling

自分の呼吸する音がやけに大きく聞こえた。色とりどりの魚、ああ、あれは小さい頃図鑑で見た、確か、あれ、なんて名前だったっけ、考える間も無くビュンと泳いで遠ざかる、いろとりどりの魚。

沖に出るにつれて波が高くなる。海底の青、筋となって差し込む太陽、下がる温度、妙な静けさ。「ここから先は気をつけなくてはいけないよ」誰かに言われているような。

ねえ、ほら、みてよ、あれ。指をさして伝えようにも、遠い海底の妙を共有することはできない。浅瀬に戻りたいな、と少し思う。けれど何か、重くどっしりとした質感のものに包まれているような、確かさがそこにはあって、どこまでも砂浜から離れていきたくもあって。

 

肉体の疲労はすぐに追いついてくる。さあ、帰らなければ、ふっと振り返れば、「ああ、こんな遠くまで来たんだな」子供の頃に戻ったような、純粋な感慨。揺れる波の中にあったはずの確かさが、不安へと入れ替わるのを感じる。

飯倉さんおやすみなさい

いろんなことが上手くいかなくて、飯倉さんは、こんなことを思いました。
わたしがわたしに置いてきぼりにされているみたい
なんだか回りくどい言いまわし。ちょっと格好よさすぎる言葉かもしれない。飯倉さんは人差し指と親指で前髪をなおします。でもほんとうに、そんな感じ。

なんだか、悪口よりずっとタチが悪い、アクイに迫られて、いつのまにかインフルエンザみたいに感染しちゃって、自分の中で育っていくみたいで、とっても、へん。
むかしから、感情がごちゃごちゃしている人をみると、わかるよぉって、ぎゅーってしたくなる。でも、さいきんそんな人のことばがわからなくなってしまいました。昔はもっとうまく理解できていた、つもりでした。
飯倉さんは「はしろう」と小さな声で言います。キラキラした街からすこし離れた路地を、です。いつもの街じゃなくて、頭の中の街。そこに行けないならせめて、遠くの国の、知らない街の、すこし離れた裏路地を。
ずっと寝ていたいなんて思わないけれど、好きなようにしていたいという気持ち。でも、好きなようにしている人の気持ちに、よりそえないんです。
飯倉さんは冷蔵庫にあったお酒をかぞくに内緒で開けます。プシュッと音がして、ぐびっと飲みます。
すんごいイヤな感じで眠くなっていくのを、しかめっ面になりながら、飯倉さんはふとんにくるまります。

11/23 祝日 メモ

嫌いな自分になっているときだけ無神経に自分を肯定したりして、数日後には白と白に挟まれてひっくり返って裏がわになってた部分があらわになるのもなんとなく分かるし、身動きなんてとれやしないんよ。

小説家でもないのに書きたかった物語があったりして、優しくて丁寧な、生活のことが書きたいなぁとか思ってた。シンガーでもないのに歌いたかった曲もあって、なんだかもう大丈夫だってことを、仲のいい人たちに伝えたくなったりしてた。

そういうの全部なくなって、ただ悲しいくらいに晴れた祝日が来て、僕は学校にぼんやりと向かいながら、剃り忘れたヒゲを触って今しか役にたたないようなつまらない考え事をしている。

こんな風なのが循環するのよね。小説家でもシンガーでも、花売りでも銀行員でも、とにかく何かが始まるまで、嘘みたいな秋晴れの終わるまで。