タルイ氏の現在【藝大、就職、音楽】#1

※これはタルイ氏の近況とそれに至るまでの経緯を書き連ねているものです。そんなことに興味がない人もいると思うので、いま何をしているのか端的にわかるよう、リンクを載せておきます。

https://www.youtube.com/channel/UCTZzxdmNYpv1vQVdgLcd5YQ

このリンクの話に行きつくまで、多分まだ何回か連載しなければなりません。そのくせ次を書くかは、わかりません。しかもこのリンク先に行っても、何をしてるのか真意はわからないと思います。よってもう、これから先を読むしかないのです。まんまと術中にはまりましたね。

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タルイ氏がいま現在何をしているのか。

そもそもタルイ氏といえば、2016,17年ごろは、東京藝術大学で演出やプログラムノートを手がけていたことで、学内全域にその名を轟かせていた暴君、いや正確には学内の2,30人かに存在を知られていた健康優良青年である。彼は異常な経歴を持つ。その異常さの代表として先祖代々、というよりタルイ氏一人によってヒソヒソ語られているエピソードが、中学一年生からヴァイオリンをはじめ、クライスラーの”プレリュードとアレグロ”だけを一年間毎日練習し、音楽科高校のヴァイオリン科へと滑り込んだというものである。タルイ氏は後年「そこまでして行くべきだったのか」という問いに、散々「夢に向かって努力する。それは当たり前のことだろう。」と繰り返した後、「ぶっちゃけ中学の奴らに格好付けたかったのだ」と小さくこぼしたと言う。

 高校でもまた、異端児として独り学習塾”お茶の水ゼミナール 吉祥寺校”に通い詰め、東京藝術大学音楽学部楽理科という、国内随一の芸術大学における、なんとも実体のつかめない世界に飛び込んだ。2015年4月、彼が18歳のときである。彼はそこで音楽学という、やはりあまり実体のつかめない領域の専科生となり、4年間の学問修行を経たはずである。それすなわち、真っ当に行けば2019年現在は卒業、あるいは大学院生へと駒を進めているはずであった。

しかし、どうも大学院生になったという噂はない。というか、彼の噂自体が、全くチリ1つない。清々しいくらい、全くだ。彼の存在はここ1,2年、ごく限られた人間のみの知る、言うなれば巨匠の最晩年みたいな(言うなれば)ものとなっていた。

 しかし、大学院に行っていないのならば、卒業し就職やら留学やらで忙しくしているのか、と思えばそうではなく、藝大に週3日やってくるキッチンカーの前のベンチで数時間にわたりお店のお姉さんと大層楽しげに会話している姿が目撃されているという。一体全体これはどういうことなのか。

タルイ氏がここで結論を先取りする。「留年したお。」そう、彼は晴れて5年生になったのだ。

 彼を少し知っている人物からすると、それもまた納得いく事実かもしれない。なにせ彼はこれみよがしに(誰が見るでもないのに)、まるでそれこそが大学生の本分であるといわんばかりの勢いで、講義欠席の限りを尽くしていたからである。講義室に行くかと思いきや校舎の奥まった場所にある喫煙所で寝転び、木漏れ日に気を良くした。同じように遅刻欠席の限りを尽くす学友とたまたま出会えば上野公園→浅草→隅田川スカイツリーのお決まり散歩コースへ出向き、一瞬にして霧散する中身のない会話で馬鹿笑いすることに限りある命を消費していた。

「全く、誤解はよしてくれよな」とタルイ氏はいう。「おいらは就職活動のために、ワザと留年の道を選んだんだぜ」

思わず取材陣は聞き返した。「どういうことですか」

「就職活動では新卒が有利となる、と聞いた。正確にいえば、新卒が有利になると、おいらのおっかあが判断を下した。なので留年したのである」

「じゃあ、単位は、どうなっているのですか」

「計画的に二単位を落とした」

卒業論文は?」

「およそ卒論と呼べない代物を、不甲斐なさと無念と教授の失望の果てに提出した」

卒論のクオリティを自覚しているのにも関わらず、我々取材陣に対してタルイ氏は鼻高々であった。しかし、いまいち腑に落ちないところというものがある。

「去年は就職活動をしなかったんですか」その言葉に、にわかにタルイ氏の顔が青くなり、飛ぶ鳥を打ち落とす勢いで伸び続けていた鼻が”しゅんしゅんしゅん”と音を立ててしぼんでいった。

「去年就職活動をしていれば、学費を払わず、今年から働きに出ることができたはずでは?」

「・・・うん。」途端子犬のごとく縮こまったタルイ氏は幼児のごとき素直さで頷いた。しかし次の瞬間、

「進路に迷ってたんじゃい!!仕方ないじゃろがい!!」と白昼堂々わめき始めた。扱いに困るとはまさにこのことで、我々取材陣はまだこの稚児を相手取らねばならぬのか、と今一度、唾を飲み込まねばならなかった。

 

(おそらく、続く)

 

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◆たるい youtube channel

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カンテラ youtube channel

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杭をうつ

夢の中で会った飛行機のトオルは、やはり何かを生み出すことをやめてはならないのだと言う

「杭を打ち込むようなものなのかもしれないな。作品をつくるというのは」

「どういう意味だかどうもわからんのやけれど」夢の中でぼくは甘ったるい映画の名前みたいなお酒を飲んだときのように、ふらんふらんとしていた。

「地面にさ、打ち込むんだよ、自分に繋がってるロープをさ。そうしないと飛んでいってしまうだろ。風に煽られて、凧みたいにさ」

「君は飛ぶことが仕事なんじゃないのかい」

「確かに僕は飛ぶことが仕事さ。だからこそ、何より避けなきゃならないんだよ。風に煽られて飛ばされちまうって事態をさ」

「わかったようなわからんような話だな」

「そうかいそうかい、それでも別にいいさ。でもこれだけは言える。杭を打ち込んでおけば、はぐれないですむんだ」

「はぐれないですむ」

「そうだ。夜の中で飛んでいると、本当にそこがどこだかわからなくなっちまう。灯台の灯りが頼りになるのは、それが見えてからさ。それまでの間、頼りにできるのは、打ち込んだ杭の重さなんだ。だから作るんだよ。はぐれないように」

朝起きてから仕事に出てもなお、妙に頭の中にはその言葉だけが残っていた。

"だから作るんだよ。はぐれないように"

昆虫のハシゴ

大学の一角に喫煙できたところがあって、でもそれが6月末までで終わってしまって、今では校内全体が禁煙になった。僕はそんなに一人では吸わないし、日課にはなっていないので正直そこまで困らないと思っていたけれど、最近の気候によって、タバコでも吸ってないとやってらんねぇよ、というようなムーヴメントが体内に起こっている。

なので休日になっていそいそと、禁煙になった場所へタバコを吸いに来た。板張りの椅子のヘリにある板と板の間に吸い殻を差し込んでいくと、昆虫が地面から椅子に上がるためのハシゴみたいなのが出来ていく。今日もまたいつもと同じようなことを考えながら、このハシゴを完成させてやろうという気概で、随分と長い間タバコをふかしている。

明日は雨なんやって。

大学に久しぶりに行く。ロッカーに更新手続しないと中のもの撤去するという脅迫めいた紙が貼られていた。ごめんなさい。

久しぶりの友人と偶然に会う。相変わらずの品のあまりない、くだらない話で笑いあって、すっと別れる。別れのさらさら感がなんともナイス。

家に帰ると明日に向けて母親がカツ丼を作っている。たまごを工夫したらしい。うまかった。

アカシア

花の名前をしらない。冗談じゃないくらい。虫の名前はけっこう詳しくて、でも虫を捕まえるには花ってとっても重要で、そこらへんの怠惰なかんじが、なんとも言えず、自分。

ミモザのことをアカシアというらしい。「ミモザがゆれる〜」とか「アカシアの花が〜」とか、何かの曲の歌詞にあって、全然違う花だと思ってたわ、イメージ変わるわ。新宿にあるレストランで「アカシヤ」ってあったな、あれ、誰と行ったっけ、ちょっとデートっぽかったなぁ。

バイトとバイトの間の移動中。いつまでこんな感じなんだろ、ずっとはやだな。

6割くらいほんとうの日記

 久しぶりに両手ばなしに挑戦する。わりとうまくいく。よどみが清められ終わったみたいな、空気が気持ちよくて何度も手をはなす。息をすれば数メートル先まで吸い込めるようで、じゃあだから、すごい速さで走り抜けたらすんごいことになるゾと思って勢い立ち漕ぎ。自転車は高校生のころ買ってもらったすごく頑丈な高いやつで、おかげさまで全然こわれない。今は線のほそいクリーム色の、「ちょっとそこの湖まで」みたいなのが欲しかったりする。

 街に出て、給料日の次の日で、大きな額のあるうちに新しいくつを買った。デパート5階のABC-MARTからは隣駅のビルが見えた。赤い文字で意味の知らない外国語がひかっていて、なぜか小学生の、塾に通っていた帰り道を思い出して。

 大きめの紙袋にハイカットのコンバース。次は何をしようか、考えているうちに夕暮れ。安い喫茶店にはいって色んな人の短編を一つずつ読む。

 夜になったら、2番目くらいに好きな作家の、あと3ページくらいのところでゆっくりと本を閉じる。

白、あい色、ピンク、橙

 寝ぼけた両眼はネオンをぼんやりと映す。白、あい色、ピンク、橙、丸くてふんわりとした明かり。とにかく掴まっていよう。そうすれば落ちることはない。

 色んな種類のお酒をのんだ、のんだ。宝石館に行ったみたい、キラキラと輝くおいしいお店、沢山のキラキラアルコール。あれも、これも、なんて言っているうちに、よっぱらったもんだなぁ。

 柴崎の歩きに合わせたやさしい振動が心地よい。「起きた?」少しだけぶっきらぼうな声。やっぱり、この状況になれてないみたい。うん、そうだよね、私も。

 どこに向かっているんだっけ。「あと少しだぞ」低い柴崎の声。ハタチをすぎて誰かにおんぶされるなんて、思わなかったなあ。脳みそはちょっぴり痛いけれど、美味しいお酒だったから、気持ち良さの方がずっと、ずっと。

 白、あい色、ピンク、橙、明かりの上にふわふわ浮かんでいるみたい。もう一度目を閉じて、ぎゅっと掴まれば、骨だけかって思うくらい薄っぺらい柴崎のからだ。朝になったらお礼をいったり、謝ったりしよう。

 朝になったら、朝になったら。